2006.03.13 求めるサッカー、育むサッカー - 第2節 FC東京戦

 すっかり真冬に戻ってしまった本日。この天気が土曜日じゃなくて本当によかった。先週の川崎戦は長袖に手袋だったエジミウソン選手が今回は半袖。やっぱりブラジル人は暖かい方が身体もよく動くよね。(といっても、FC東京は長袖に手袋の選手が多かったけど。東京の人からみれば、まだまだ寒い気温か)

 ブラジル人だけじゃなく、この試合は全選手が本当によく動いたと思う。川崎戦のように後半に足が止まるようなこともなかった。今まで「最後まで走り抜くサッカー」を見て育ってきた私にとって、新潟のサッカーとはやはりそういうことだ。「全員が最後まで走る」というのは、個々の能力が劣るなかで結果を出すために必要不可欠な要素であったわけだが、個々の能力が上がってきた(まだまだ上げる必要はあるが)今のチームに対しても、やはり求めるものは同じ。この思いはアルビレックスを応援している方のほとんどが持っているのではないだろうか。

 幸いなことに、鈴木監督のサッカーはそんな私の思いを満たしてくれそうである。しかも、中盤の選手が縦横無尽に動きサイドバックが積極的に攻撃に参加する「攻撃時も動きの多い」サッカー。いかにも楽しそうだ。実際、FC東京戦は見ていて楽しかった。選手たちも楽しそうだった。でも、不本意そうに見える選手もいた。

 まずはシルビーニョ選手。川崎戦の彼は本当に自由に動いており、ボールを奪ったらまず彼にボールが渡り、そこからショートパスを繋いだり、空いた逆サイドのスペースにロングパスを出したりしていた。自由な分、他の中盤の3選手が空いたスペースを埋めるのに苦労していたのは確かだが、去年までの新潟にはない攻撃の形で面白かった。今年のアルビレックスのポスター宜しく片方のサイドに4選手が集まっていたりするのだが、当然相手もそのサイドに寄ってくるわけで逆サイドはガラ空き。シルビーニョ選手はその空いたスペースを突けるだけの素早い判断と鋭く正確なパスを出せるという魅力を私に見せつけた。しかしながらFC東京戦ではシルビーニョ選手にボールを預けずに前へ前へとパスを出すシーンが多く、川崎戦で見たような素晴らしいサイドチェンジのパス(新潟ゴール裏から感嘆の声が固まりとなって聞こえたくらいすごかった)が見られなかった。今節、寺川選手とシルビーニョ選手のポジションが入れ替わったことで寺川選手と鈴木(慎)選手が自由に動けるようになったことは歓迎するが、シルビーニョ選手の動きには不満が残る結果となってしまった。シルビーニョ選手も不満だったに違いない。(と、勝手に断定)

 そして矢野貴章選手。川崎戦と役割は同じ。楔のボールを受けてもキープがままならないところも同じ。しかしまだまだこれから伸びていく選手だと思うので温かく見守りたいと思う。まわりの選手の動きが読めずに、チャンスを何度も拾い損なって悔しがっているのを見ていると、「今日はそういう日だ、いつか運が向いてくるさ」と声を掛けたくなってくる。FWはいろいろなプレーを要求されるポジション。楔のボールを受けてキープし後方の選手が上がる時間を稼いだり、DFの裏へ抜け出る動きをしたり、サイドに流れて二列目の選手が上がるスペースを空けたり、ボールを持った相手DFのパスコースを限定するポジションを取ったり、中盤で奪えそうな雰囲気だったらそこまで下がってボランチと挟み込んでボールを奪う手助けをしたり。矢野選手はひたすらこれらのプレーを繰り返し繰り返し続けていた。上手くできなくても、繰り返し続けていた。攻撃に守備にと最後に走れなくなるほど走った彼には賛辞を呈したい。(そして今年から私の近くの座席に引っ越してきた矢野貴章専属ヤジオヤジには苦言を呈したい。最初から最後までそんなにボロクソ言うな!)

 今日の試合で気になった「ボールを前へ前へと急ぐ意識が強い」ということ、これはスタジアムの雰囲気がそうさせているのではないかと思う。相手の守備の形が整う前に攻めるというのも当然やってしかるべきことだが、今年のチームはもっとパスをしっかり繋いで攻めるという形も目指しているはず。DFの選手がボールを持ったらやきもきして「はよ前に蹴れ!」などと叫ぶのはいかがなものか。心当たりのある方は、是非もう少し落ち着いて試合を見ていただきたい。0-0で迎えた前半のロスタイム、もうすぐ終了ならば無理にボールを前に運ばず最終ラインでボールを保持して相手や前線の様子をうかがうのが最もリスクの少ないやり方だと思うのだが、そこで例の「はよ前に蹴れ」的なざわつきがスタジアム内に充満していたのがとても残念だった。

 とはいっても、バックパスを受けた最終ラインの選手が相手FWにボールを奪われて失点するというシーンをこの試合で目の当たりにしているのだから「選手を信じて落ち着いて見ろ」と強くは言いにくいのだが(苦笑)。とにもかくにも、新潟の選手がそのシーンを心に刻み反面教師として生かすことを期待しつつ、応援する方々の温かい目にも期待したい。

2006年3月13日 水野 栄子

PROFILE of 水野 栄子
みずの えいこ 1972年生まれ。新潟市出身。小学生の時に「キャプテン翼」の影響を受けサッカーをやりたくなるも、地元はサッカー不毛の地であり断念。1999年、アルビレックスの観戦が縁で浜崎、岡田の両氏と出会い、サッカープレイヤーへの道が開ける。現在は仕事と家庭とLSS(レディースサッカースクール)通いの両立に頭を悩ませている。