2006.05.01 not enough

 練習着を全身に着込んだいいおっちゃん(多分サッポロビールの偉い人)がアレだけ嬉しそうに微笑んでいると、それだけでサッポロビールが美味く感じるから不思議だ。開門前の小春日和のスタジアムでは誰もがビールの美味さに舌鼓をうちながら日曜日のデーゲームを今か今かと待ち焦がれていたが、あのおっちゃんの笑顔がまたいい肴になった。中原の素晴らしいゴールと一緒に、あのおっちゃんの笑顔も心に刻んでおこう。

 試合の方は中国旅行帰りのガンバ大阪が序盤のチャンスを逃してしまったのがケチの付け所の始まりで、そのまま修正しきれずズルズル行ってしまった。ようやくリーグでスタメン出場となったファビーニョの鬼プレスやお馴染みとなった貴章、中原の体を張った攻撃は相手がある程度強い方がはまるわけで、この日の結果は実はサプライズではなかったのかもしれない。

 さて、この日は新潟vs大阪が2個所で開催されていたのをご存知だろうか。bjリーグファイナルの対エヴェッサ大阪戦だ。僕はサッカーは下手糞だけどバスケットには自信が有る。スラムダンクを熟読するほどの腕前で、僕自身は一度も打った事はないがメガネ君が陵南戦で3ポイント入れたのを読んだので僕だって入れられるはずだ。そんなバスケ通の僕は試合後もやはりビールを飲みながらバスケットボール観戦をする事にした。試合は素晴らしかった。第4クォーターの最後の最後までもつれる好ゲームだった事もあるが、それ以上に選手の気持ちが伝わってくる好ゲームだった。ワンミス、ワンプレーごとにある選手はコートを拳で叩き、逆の選手は観客やチームメイトと喜びを共にする。

 僕は2週間前からバスケファンがうらやましかった。前回名古屋戦でセイゴローに現れた新潟アルビレックスの選手達は僕らのコールに本当に嬉しそうに応えてくれて、彼らが心から感動しているのが手に取るように分かった。もっと応援してやりたいと正直に思ったし、あの選手達に求められる観客がうらやましかった。逆に僕らのアルビレックス新潟には満員の観客に慣れてしまっている選手達もいるようで、彼らからはあまり「自分のプレーや自分の個性で客を呼んでやる!」とか「客を呼ばなきゃチームが潰れる。自分の給料も上がらない。」という意気込みは伝わってこない。もちろんプレーをする事が本業で、これがおろそかでは話にならないのだが、ガンバに勝った今しか言うチャンスはないと思うので、言っておこう。Not Enough。君達は僕らに夢を与え切れていない。

 新潟のプロスポーツシーンはサッカーだけではない。バスケ、スキー、陸上と多様さを増しているし今後も増えるだろう。僕はサッカーを愛しているので他のスポーツにセイゴローの客を取られたくないと思っている。だが、単純に観客が感じる「営業力」を比べてしまうと、今新潟で一番頑張っているのはバスケットなのかもしれない。事実、僕のある友達は有明に昨日遠征している。

 ファビーニョがユニフォームをスタンドに投げ込んだとき、英学がスタジアムを一周したとき、氏原がスパイクを投げ込んだとき、僕らは彼らと一体になった。もっと僕らを虜にしてくれと、試合に勝った今こそ彼らにはいいたい。何よりも選手達の「また試合を見に来てくれ」というアピールほど、僕らの心に響くものは無い。No, No, Not enough !! 僕はまだ足りない!
2006年5月1日 浜崎 一

PROFILE of 浜崎 一
はまざき はじめ 1977年生まれ。神奈川県出身。1999年、新潟大学在学中にJ2に昇格したアルビレックスに出会う。当時のキャプテン木澤選手のクロスに感動しスタジアムに通い、2000年からはゴール裏で観戦。選手のプレーをよく見る現在のゴール裏の流れを作った。29歳の今も現役の県リーガーとして活躍?中。