2006.05.08 not enough <その2>

 ゴールデンウイークが終わった。Jリーグの試合がたくさんあった。私にしては珍しく他チームの試合をテレビで見たりしていたのだが(適当に眺めているだけだが)、6日の生観戦したホームの勝ち試合を含めても、最も印象に残っているのは3日の千葉-浦和戦でゴールを決めたときに見せたジェフ千葉の巻選手の表情だ。

 彼はゴールを決めたあと、そのまま目の前のゴール裏に駆けていこうとする。そこへ他の選手が祝福して抱きつきにくるのだが、彼らには目もくれない。テレビで見ていたので憶測ではあるが、視線も意識もまっすぐゴール裏に向かっているように見えた。決して下心のあるサポーターへの煽りではなく、本能がそうさせているようなぶっとんだ表情だと思った。その試合の相手が浦和であり、0対0の緊迫した状況であり、そんななかでゴールを決めたわけだから、サポーターの歓喜の爆発力は相当なものだったに違いない。巻選手はゴールを決めた瞬間にその目の前いっぱいの歓喜が脳に飛び込んできて、自分の喜びと相乗してぶっとんだんだろう。フクアリ万歳! そのストレートに感情を出せる巻選手の性格にも万歳!

 こんな風に、選手の歓喜とサポーターの歓喜がひとつになるようなシーンは、過去、ビッグスワンでも何度かあった。昨年で言えばアンデルソン・リマ選手の川崎戦でのフリーキックとか。しかし今年はまだ物足りない気がしている。今のところ成績も申し分ないし、監督も選手も毎試合観客に対し感謝の意を述べてもくれている。さらには毎試合後、選手たちは本当ならすぐにストレッチを始めるべきところを、場内を一周して10回も挨拶している。これだけのことをしてくれている選手たちには本当に感謝しているのだが、やっぱり、やっぱり、何か足りない感じがするのだ。

 試合中は常に冷静であれ、と思う。余計なカードを貰ってほしくないし、怪我もして欲しくない。でも、私が何もかも忘れるほど歓喜を爆発させるには、選手たちも同じように何もかも忘れて歓喜を爆発させてくれないと難しいのだ。表面的な盛り上がりではなく、本能的な爆発を私は見たい。そのためのヒントは前回の浜崎くんのコラムにあると思う。選手も、サポーターに対して「まだ足りない!」という思いをぶつけて欲しい。

2006年5月8日 水野 栄子

PROFILE of 水野 栄子
みずの えいこ 1972年生まれ。新潟市出身。小学生の時に「キャプテン翼」の影響を受けサッカーをやりたくなるも、地元はサッカー不毛の地であり断念。1999年、アルビレックスの観戦が縁で浜崎、岡田の両氏と出会い、サッカープレイヤーへの道が開ける。現在は仕事と家庭とLSS(レディースサッカースクール)通いの両立に頭を悩ませている。