2005.07.18 たまにはシステム論も

 やはりサッカーで決め手になるのは個の力、1vs1の勝負に勝つことだ。新潟の先制点は、左サイドで相手ディフェンダーをぶち破り、置き去りにした慎吾のクロスボールから生まれた。

 アマチュアならともかく、プロの組織だった守備網の中では余程のポジションミスをしない限り穴は生まれない。守備側からすれば、作戦ボード上では常に相手を完璧に押さえ込むことが可能となる(それを破るのに一番効果的なのが、ダイレクトプレーやカウンターなど、相手の守備陣形が揃わないうちに速攻をかける戦術である)。

 この日も名古屋のディフェンス陣に対し、ゴールがとれそうでとれない時間帯が続いたが、後半開始早々の慎吾のドリブル突破が名古屋の守備網に穴を空けた。ペナルティエリア内への進入をケアしなくてはいけなくなった相手CBが、持ち場を離れ、慎吾に向かおうとした瞬間に、タイミング、精度とも最高精度のクロスボールが上がる。中央ではそれによってマークが緩くなったエジミウソンがフリーになり、ファーサイドから滞空時間の長い素晴らしいヘッドを叩き込んだのである。

 今、僕が教えているジュニア(U-8)の子にも盛んに1vs1で勝負することの重要性を説いているところだ。個の力が組織を破るのだ。そしてやっている方はもちろんのこと、見ている方も1vs1の攻防を見るのは楽しい。スポーツの原点はやはりこれだ。局面局面で勝たなくては強いチームなどは作れない。リスクマネージメントなんて糞食らえ。たまにはマノーン(Man On)のかけ声をスルーして、ターンで挑むべし!監督は決していい顔をしないだろうが、そういう選手もどんどん出てきて欲しい。

 さて、3-0で快勝した名古屋戦だが、結果論とはいえ、4-4-2にしたフォーメーションが好結果を生んだようにも思える。

 まずはこれまで桑原のワンボランチだったのが、勲が入ったダブルボランチになったことで守備が安定した。サイドに流れたボールにも、片方をバイタルエリアに残したままでもう一人がチェック、もしくは味方のフォローにいけるため、やはり守備面での安定性という点ではこちらに分があるように思える。桑原も勲も攻撃参加は少なかったが、その分、自陣内でスペースを埋め、またはディフェンスラインからのボールを前線に丁寧に繋いでいた。

 しかし、一番効果的だったのは優作をスタメンに起用し、エジミウソンと近い位置でプレーする選手をおいたことだろう。確かにエジのキープ力、突破力はチーム内で突出したものがあるが、最近押しこまれる展開が目につく中、カウンター攻撃の起点になるエジは激しいマークにあい、またフォローに来る選手がいない(遅い)ため明らかに孤立していた。

 僕の理解するスリートップ(4-3-3)のメリットは、以下の通り。まず守備面では、両ウィングも守備に戻ることにより、高い位置でのプレス、または自陣に引いたときに、相手にスペースを与えない3ラインを形成することが可能になること。一方、攻撃面ではカウンター時において、いち早く相手陣内に進入できることに加え、左右のウィングが高い位置で開くことにより、一番危険な中央にスペースを空けることが可能になることがあげられる。このスペースに向けて逆サイドの選手、中盤の選手が飛び込んでくる手はずなのだが、残念ながら、特に最近は机上の理論になりつつあり、前線で全くタメを作れず攻撃は単発。攻守を担う両ウィング、中盤の選手も暑さと、結果的に徒労に終わる上下のアップダウンの繰り返しで90分持たないなど負のスパイラルに陥っていたのである。

 優作という格好のパートナーを得たエジは、マークも軽減され、前を向いてプレーできることが多くなった。また、両サイドハーフに入った寺川と慎吾も抜群の運動量でツートップのフォロー、サイドへの飛び出しを行うなどここ最近ではお目にかかれない厚みのある攻撃が可能になった(後半で寺川に代わった青野もよいアクセントになっていた)。もちろん、この1試合のみで結論が出せるほど、サッカーは浅いものではないが、リーグ前半戦終了時に明るい展望が見えてきたのは嬉しい限り。続く、アウェイ大分戦でも勝利して、今シーズン初の連勝という形で中断期間を迎えて欲しい。昨年の例を出すわけでもなく、連勝が出来るチームは必然順位も上がっていくのだ。

 ところで、ここ最近の喜多の覚醒ぶりはどうしたことか。ディフェンス時にギャラス(チェルシー)並の強さをみせるだけでなく、正直、あそこまで強力なシュート力を持っているとは思わなかった。

 8月に発売されるサポーターズCDには、そんな喜多選手の新曲も収録されている。これはおそらくこのアルバムで一番話題を呼ぶであろう秀逸の出来なので、発売がもう1ヶ月早かったら、と悔しくてたまらない(笑)。ということで、みなさんこちらもお楽しみに!

2005年7月18日 浅妻 信

PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。