2005.07.25 新潟の夏、ミドルシュートの夏

 ついにアウェイ戦で勝利。そして、連勝も初で、先週のコラムで予告したとおり順位もリーグ中位の11位まであがってきた。自嘲気味に笑うしかなかった得失点差も気がつくとこの2試合のプラス4で、マイナス7と許容範囲に(笑)。梅雨明けとあわせ、約1ヶ月の非常に楽しい夏休みを過ごせそうだ。

 さて、昨日の対戦相手、大分とはそれこそJ2時代からすっかりお馴染みの相手である。当時は大分の資金力がうらやましく、強力な外国人選手を含めた豪華な補強作戦を耳にするたびに敗戦の言い訳をそこに探したくなったものだ。仲の良い大分のサポーターの「いやいや、全然そんなことないって」の謙遜を富者の余裕と捉えていたわけだが、隣の芝は青く見えるとはよくいったもの。現在、大分のサポーターは新潟を羨ましく感じているかもしれないが、サッカーのシミュレーションゲームほど急転直下で好転はしない。我々地方クラブはやはり財力的に辛いのだ。
「そちらの芝の方が青いですよ」
「いやいや、とてもとても」
なんていう会話も、一部のビッククラブからすれば、
「僕たちから見れば、あなた達両方とも芝生じゃなくて田んぼですから!」と一刀両断されているかもしれないのだ。

 と、思わず脱線してしまったが、そんなJ2の香り漂うカードだったからか、試合内容までJ2時代に戻ってしまったかのようなパフォーマンスだった。前半、新潟の攻撃は全く形をなさず、大分の守備網の前にパスをことごとく遮断される。テレビ画面からも湿気が漂ってきそうな蒸し暑さの中、選手の足は止まりまくり、ついでに、この日朝からサッカーをしていた私までが、その眠さから思考回路が止まりかけてきた。
 この試合を最後に長い中断期間に入るんだぞ。直接のライバル対決であるこの試合勝つか負けるかでは天と地との差があるんだぞ。必死で言い聞かすが、試合展開、実況アナウンスのまったり度もあって、試合中、「天と地」の連想で榎木孝明がにこやかに笑いかけてくるほどの錯乱状態である。新潟、大分のチーム力に問題があるのではない。やはり、たとえナイターであろうと真夏にサッカーをするべきではないのだ。
 なかなかフィニッシュまで結びつかない両チームのサッカーと過密日程を呪った。

 後半ファビーニョが投入され、反町監督が自ら大分を倒すにはこれが一番とする「3-5-2」に変えた。正直、ここからサッカーが劇的に変わったと言うほどサッカーは単純ではない。しかし、前半と違い、ファビーニョが入り、中盤を厚くしたことで確実にボールが、人が動くようになった。そして、皮肉にもこのJ2マッチを決めたのは、これぞまさにJ1レベルともいうべき、ファビーニョのスーパーな2発だったのである。
 ミドルシュート。これぞ、まさに昨年からJ1とJ2のレベルの差を感じさせられ続けたものだ。守備の組織レベルとしてはJ1とJ2もそれほど差がないかもしれない。しかし、そんな周到な準備をしていても、あっさりとゴールをねじ空けられたのがミドルシュートを代表格とする個人技であった。そして僕らはこのミドルシュートにさんざん辛酸をなめてきた。このJ2マッチを決めたのが、J2育ちのファビーニョによるJ1シュートだったのは感慨深い。

 昨日の試合の勝利は本当に大きかった(今でもえびす顔だ)。そんなわけで、続くNHK「速報Jリーグ」も楽しく見ることが出来た。ゲストは昨年まで同番組で解説をし、現在、清水の監督をしている長谷川健太氏であったが、移動距離の少なさそうな、清水でもやはりこの真夏のHOT6は相当肉体的にきつかったそうだ。パフォーマンスが低下するのは致し方ないとも。
 ホームが2試合しかなく、移動距離が全チーム中1位であった新潟のHOT6は結局3勝3敗で終わった。3敗を嘆く事なかれ、実に勝ち点9をゲットしたのである。勝ち点で言えば、好調を伝えられる名古屋(2勝3分1敗)と同じだ。やはり、勝利は大きいのだ。

 リーグは約1ヶ月の中断期間に入る。連勝という最高のフィニッシュで終えた我々は、リーグ再開後のパフォーマンスに期待と想像を膨らませる楽しい夏休みになりそうだ。この状況を作り出した選手、スタッフにあらためて、最高の賛辞を送りたい。さぁ、次はガンバも倒すぞ!

2005年7月25日 浅妻 信

PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。