2006.06.05 彼らにのっぺと日本酒を

 ドイツ戦のニュースを見ていたら、急にW杯が始まるっぽくなってきた気がする。いきなり自分の話で恐縮だが、僕はここ4~5年ほど代表にはとんと興味を失っているので、高原の活躍を耳にするまでW杯モードになることはできなかった。俊輔、高原が涙を飲んだ4年前、僕はセイゴローで見れるはずだったロイ・キーンをすごく心待ちにしていて、彼があっさり帰国したときには「俺のW杯を返せ!」と叫んだのが懐かしい。ちなみに、陽気なアイルランド人もショックだったらしく、当日セイゴローで友達になったアイルランド人のポールは「We don’t have Roy Keane.」と悲しそうに語っていた。

 さて、前置きが長くなったが、今回のテーマはW杯ではなく、スタジアムの食について。日本のW杯ではスポンサーの関係上、販売店の飲食物は厳しく制限されていた。そんなこんなで、食事的にはまったくもって「美味しくない」W杯だった。あれから4年、W杯と丙丁つけ難かったセイゴローの食事事情は大きく変わった。Nゲートにローソンが出展し、スタジアムでイタリアンが売られ、梅山がフィーチャーされたおやつまで売られるようになったのは、元が元だっただけに単純に嬉しい。Supporter Conferenceで、中野社長と小山さんが「スタジアムでは不味いものは出さないくらいの覚悟でやりたい」と言っていたが、方向性としては確かに実現されつつある。

 スタジアムの食で評価が高いのが博多や清水。先日、ナビスコカップで清水に行ったときにちょっと注意して見てみたのだが、清水の売店は店が広く、流し台も設備として備わっている。新潟の販売店はよく見ると分かるのだが、まず狭い店が多い。そして流し台が付いているように見えるが、あれはすべて店舗側が自前で持ってきているものらしい。セイゴローは観客-選手という点からはトラック付きのわりに優れたスタジアムだが、興行主-観客という点からは欠点が目立つと言わざるを得ないのが現実だ。

 さて、ハード面の文句を言うと答えは「改修」しかなくなってしまうので、ソフト面の話に戻そう。開門前にやらなければならない僕らの仕事のひとつに横断幕張りがある。今年からS側にも張ることになっているのだが、実はこれがひとつのチャンスになっているのだ。J1昇格後セイゴローのコンコースは閉ざされてしまい、僕らはNスタンドに閉じ込められてしまったわけなのだが、意地汚い僕はS側のお店に「半熟煮卵」があるのを発見しているし(美味しかった)、バックスタンドの販売店にはギネスビールが売られていることを知っているのだ。

 現在のセイゴローの「グルメ度」は正直なところまだ「グルメ」とは呼べるものではないと思う。でも、スタジアムが発する「楽しさ」だけはディズニーランドと並んで日本有数だと思う。僕はあのコンコースを何とかして開放して欲しいと思っているし、現在スタジアムで売られていない新潟最強の名物「日本酒」が売られていないという事実を変えていきたいなと思っている。

 多分、あの陽気なアイリッシュ達はもう二度と新潟に来ることはないと思う。そんな彼らはセイゴローでバドワイザーとホットドックを食べて帰っていった。僕らのホスタビリティーってそれっぽっちだったっけ? ポールにはのっぺを食わせるべきだった。そしてそのとき、彼らは飲み物にビールを選ぶだろうか?

2006年6月5日 浜崎 一

PROFILE of 浜崎 一
はまざき はじめ 1977年生まれ。神奈川県出身。1999年、新潟大学在学中にJ2に昇格したアルビレックスに出会う。当時のキャプテン木澤選手のクロスに感動しスタジアムに通い、2000年からはゴール裏で観戦。選手のプレーをよく見る現在のゴール裏の流れを作った。29歳の今も現役の県リーガーとして活躍?中。