2006.07.03 W杯という日常

 昨年までの守備的な戦術から一転、今季はダイナミックな攻撃で他チームとがっぷり四つに戦っている。失点が多いのが難点だが、はまった時の攻撃は爽快そのもの。うんうん、いいチームになってきたじゃないですか。申し訳ないが、この批評はアルビレックスではなく、僕の所属する県4部リーグのチーム「A.S.ジャミネイロ」について。

 今季序盤から新戦力がフィットし、未完成ながらもボールを保持するポゼッションサッカーにトライ。くしくもアルビレックス新潟と同じ変化を自分達で体験するというアルビレックスサポーターのひとりとしても頑張りがいの有るチームだ。

 ポゼッションサッカーは全員の基礎技術はもちろんのこと、個々の判断力やチームの連携が問われてくる。ジャミネイロでは3年間の苦労が実り、最低限の基礎技術と体力をほぼ全員が身に付けることができたため、現在4勝1敗と好調な成績を残している。しかし内容はどれも苦戦続き。大型補強をしたにもかかわらず、苦戦している理由はひとつ。新潟県の最下層である4部リーグとはいえ、ここ数年リーグ自体のレベルアップが著しいためだ。聞けば3部も2部もレベルは上がっているという。日本のサッカーは確実にレベルアップしている。

 「日本はレベルアップはしたが、安定した力は発揮できなかった。体格差を埋めることができず、勝ち点3を取ることができなかった」。

 ジーコが最後の記者会見で語った言葉だ。みんなそうだと思うけど、僕はこの日本代表の結果をひどく無念に思っている。岡田監督がフランスから帰ってきて「日本はまだ個の力が足りない。フィジカルコンタクトを避けるためにダイレクトプレーを磨き、コレクティブに戦う必要がある」と報告書を出したのが8年前。本当にその方向性だったのかは分からないけど、組織的に戦ったのが4年前のトルシエ監督のチームだった。日本は3試合でドイツでの冒険を終え表舞台から去ることになったのだが、岡田監督が分析した日本の弱点を埋める工夫はできていたのだろうか。

 W杯はサッカーの祭典。W杯は4年に1度のお祭り。そういう人も確かにいる。でもその言葉を言う資格があるのは2年に一度、W杯とオリンピックでしかサッカーを見ない人達のことだ。僕らにとってJリーグも、代表も、そしてW杯ですらもサッカーとは日常であり、本当はお祭りでもなんでもないのだ。プレーヤーにとって最高の日常空間であるW杯で、あれしきのパフォーマンスしか出せなかった選手達は本当に無念だろう。ならば、せめてその無念をしっかり反省して次につなげてほしい。

 そして、その「反省と学習」というプロセスをすべてぶっ壊してしまった川淵キャプテンの「世紀の失言」には本当にがっかりした。8年前、「決定力不足」という言葉が独り歩きしたが、それなりの方向性を示すことはできた。今「オシムジャパン」という言葉が独り歩きしているが、その言葉はこの4年間を表した言葉ではなく、夢を見た人達が次の夢を見るためだけの言葉だ。2年に一度しかサッカーを見ない人ならともかく、僕達サッカーファンはきちんと現実を見る必要がある。W杯という日常は、Jリーグという現実の延長上にあるのだから。

2006年7月3日 浜崎 一

PROFILE of 浜崎 一
はまざき はじめ 1977年生まれ。神奈川県出身。1999年、新潟大学在学中にJ2に昇格したアルビレックスに出会う。当時のキャプテン木澤選手のクロスに感動しスタジアムに通い、2000年からはゴール裏で観戦。選手のプレーをよく見る現在のゴール裏の流れを作った。29歳の今も現役の県リーガーとして活躍?中。