2006.07.17 アジア戦略

 W杯もイタリアの優勝とジダンの頭突きで終了した。割と堅実な戦い方をする2チームが決勝に残ったことが非常に興味深い。僕が今回の大会で一番興味を持ったチームは「ポルトガル」。若干荒い守備をするが、攻撃はまさにスペクタクル。ボールを奪ってからの素早い攻めは、非常に効率がよく、パスの全てがゴールへ向かうための意図を持ったものだった。

 日本は残念ながら、予選リーグで敗退してしまった。アジアのチームが1チームも決勝トーナメントに進めなかったというのも非常に残念な結果であった。我がニッポンも新生オシムジャパンに期待するものの、長期的に見れば、アジア全体のレベルが上がりその中で切磋琢磨することが非常に重要なことなのではないか、と僕は思う。次回からはオーストラリアがアジアに参戦し、他のチームも力を付けてきており、アジアのレベルは上がっていくとは思うが、もう一段ステップアップをするためには、何か大きな仕掛けが必要なのかもしれない。そんな流れの中のアジアチャンピオンズリーグ開催、ということになるのだろうが、日本が、いやJリーグがイニシアチブを取って出来ることもあるのではないか、などと考えている。

 つまり、アジア内でのプロリーグにピラミッドを作ってみてはどうだろうか。また、その頂点にJリーグを置いてみてはどうだろう。というのが僕の提案だ。

 そこで、僕の身勝手な提案を披露しよう。

 Jリーグは現状外国人枠は3名だが、これを2名に減らす。この2名は現状の制度と同じで、言わば「国籍条件なし」の枠だ。どこの国でもよい。さらに特別枠として2名の「アジア枠」を追加する。今まで枠を3名いっぱいに使っていたクラブはその穴を埋めるべく、アジアに目を向ける。アジアとはいえ2名使えるとなれば補強上のメリットも大きい。合計4名の外国人枠となり日本人選手のスターティングメンバーが1名減るかもしれないが、Jリーグのチーム数が増えるにしたがって、日本人選手のレベルも希釈されつつある。日本人選手はこの競争に打ち勝たねばならない。

 アジア枠を作るのは、助っ人的要素はもちろんだが、海外志向のアジア選手の目を日本に向けてもうことが第一。また、アジアに埋もれているダイヤの原石を発掘し日本で育てリセールバリューを高めることも考えられる。アジアNo.1のリーグとなれれば、市場としても重要視されるはずだ。そしてこれは、クラブとって育成の対価として還元される。

 これらが上手くいけば、若干の工夫をすることによってアジア全体のサッカーファンの目を日本のJリーグに向けることも容易だろう。アジアの人達の目がアジアのリーグを飛び越えてヨーロッパに行ってしまうなんて悲しいじゃないですか。

 しかも、仮にアジア全土の目がJリーグに向くとなれば、スポンサーとしてもメリットは大きい。グローバルな戦略を持つ優良企業がもっとスポンサーになってくれる、かもしれない。

 …とまぁ、こんな僕のくだらない妄想はキリがないのでこの辺でやめておくが、アジア勢がW杯で惨敗していく様をテレビで見ていくにつれ、日本だけの強化をするより、アジアを含めた強化が重要なのではないか、なんてふと思いついた次第。

 しかしこうやって色々と考えを巡らせていると、サッカーってやはり面白いんだなぁと改めて思う。ゲームそのものもそうだが、それを取り巻く全てのことも含めて非常に興味深いスポーツだ。

 余談だが、先々週日本語の喋れない外国人6名を連れて京都を2泊3日で案内するという、僕にとっては苦痛以外の何物でもない出張があったのだが、幸い外国人のうちアメリカ人は2名で、他はヨーロッパ人だった。W杯期間中だったこともあり、会話に詰まれば、サッカーの話を出すことで場が盛り上がった。やはりサッカーは世界の共通言語なのだと再認識させられた。ただ、残念ながら「ジャパン」はその会話の中には出てこなかったのだが。

2006年7月17日 篠崎 徹

PROFILE of 篠崎 徹
しのざき とおる 1966年生まれ。東京都出身。W杯やアルビレックスJ1昇格など新潟サッカー界で一番オイシイ時期を新潟で過ごす。2004年に東京へ転勤。以後アウェイでのアルビレックスを盛り上げようと日々奮闘中。