1999.10.24 第32節 MatchReport 仙台×新潟

1999年10月24日(日)13:00キックオフ
於 仙台スタジアム
ベガルタ仙台 対 アルビレックス新潟 ○ 0-1

 
 今日だけは絶対に負けられない。過去の対戦成績も順位も関係ない。絶対に絶対に負けられない。今回は仙台スタジアムには「観戦」ではなく「戦い」にきた。もちろん、正確にはピッチで戦う選手達の後押しをするために。

 過去3回の対戦には色々なことがあった。特に前回の新潟での対戦。木沢への野次、そして新潟サポの暴走行為に対する仙台サポからの書き込み、新潟のサポーターはサッカーを知らないとまで言われた。悔しくて悔しくてたまらなかった。絶対、10月24日の仙台での試合で勝つ。これしかこの悔しさを晴らす方法はないと思った。

 今回は騒動の中心人物、木沢が出場停止だったので、何も問題なく終わるかもしれない。でも勝たなくてはいけない。負けられない。今日だけは。絶対に。

 雲ひとつないきれいな秋晴れの下、駅から仙台スタジアムまでの道のりを歩く。ゲートをくぐるとそこは仙台ゴール裏。思ったほど人がいないことにおどろきつつ、アルビゴール裏を見る。目を疑う。キックオフ30分前なのに誰もいない?

 探すとバックスタンド側のコーナー付近にすこしオレンジが見えた。呆然とした。今日はこれだけしかいないのか?10人よりちょっと多いくらいだろうか。いくら屋根があるから声が響き、ピッチが近いから声援が届きやすいとはいえ、この人数じゃ声が選手にとどくのかどうかあやしい。しかもここは仙台。仙台サポの声の大きさは十分分かってるだけにショックは大きい。

 でも気をとりなおして、だからこそいつも以上に大きな声を出さなくてはいけないと気持ちを引き締める。ピッチで練習をする選手達を見てサウロがいないこと、セルジオが来てることを知る。

 キックオフ直前になり、集まってみると2、30人くらいはいるだろうか。仙台ゴール裏も人が少ない。見るとメインもバックも空席が目立つ。どこも観客不足は深刻なんだろうか。人数が少ないからこそ密集して全員が大きな声を出さないと声がとどかない。

 スタメン発表が始まった。GKは木寺、DFは水越、柴、高橋、藤田、秋葉、瀬戸、リカルド、式田、鳴尾、シンゴ。サブは恒松、セルジオ、筒井、島田、河原塚。

 選手入場。先頭のフェアプレーの旗が少しよれてしまっているのが分かる。もちろん仙台と新潟の試合だからというわけではないだろうが、いままで3試合でレッドカードが3枚でている。今回、選手入場のときのコールはスノードロップではなく、アルビレックスコール。選手に聞こえてるのだろうか、仙台サポの声は思ったほど大きくない。新潟に来たときの方が声が大きかったような気がする。

 そして記念撮影が終わり、選手がポジションへ散らばる。まずは去年までソニー仙台に所属していた鳴尾にコール。いつもなら鳴尾コールに両手を振って応えてくれる鳴尾も今日はノーリアクション。ハーフウェイライン近くまではとどかないのか。そして木寺コール。ひょっとしたら目の前の木寺までも声がとどかないんじゃないだろうか。木寺が軽く腕を上げてくれた。とどいてる。よかった。

 キックオフ。まずはアルビが軽く攻め込む。フォーメーションはお互いにワントップだろうか。様子を見ながらなかなか上がってこない。中盤でつぶしあい、なかなか前線までボールがつながらない。初シュートは仙台。ボールは大きくワクをそれていった。

 今日はDFで回してる時間が多い。ボランチにボールが入ってもダイレクト、もしくはツータッチでDFに戻す。攻撃的MFのリカルド、式田のポジショニングが悪く、ボールを前につなげない。前線は鳴尾はなぜかトラップが大きくなってボールを奪われ、シンゴは完全に消えてしまっている。DFで回す時間が長くなってきた。シビレをきらしたように水越がドリブル突破をはかる。しかし、サイドバックのポジションからのドリブルではスピードにのれず、突破が失敗してまたCBに戻すか奪われてピンチになってしまう。仙台もなかなか攻撃の形を作れず、単発的に瀬川がサイドの突破を狙ってセンタリング、もしくはそこから一度下げてサイドをかえて逆サイドからのセンタリングでゴールを狙うが、精度が低くシュートにすらもっていけない。

 特にアルビのサイドからの組み立ては見ていられないほどひどい。左サイドの藤田とリカルドは利き足しかつかわないのでパスをだすまでに時間がかかってすぐに敵に囲まれてボールを奪われてしまう。右サイドは水越がボールを持った際、式田のポジショニングが悪く、瀬戸にしか出せないので簡単に相手に読まれ、パスのだしようのない水越が無理に突破を狙い、突破を失敗しボールを奪われる。

 そして時間がたつにつれて、ミスが目立ってくる。フリーの状態からパスミス。お互いに決していいサッカーはできていない。そしてそのミスを生かしての攻撃もできない。

 なんとか中盤からパスを鳴尾がDFと体を入れ替えて左サイドを突破。DFを十分ひきつけてからのセンタリング。完全にフリーの式田が走り込む。渾身の力をこめたダイレクトボレーシュートはワクの上を越えていった。

 ペナルティエリアのすぐ外で鳴尾が倒されて得たFKのチャンスもリカルドの蹴ったボールは壁を直撃。そして今度は右サイドからシンゴの突破。そして右足で放ったシュートは力なく転がり、GKがキャッチ。シンゴはシュートの際に足にタックルを受けたらしく、倒れこんでいる。あまり倒れこむ選手じゃないが最近は徹底してマークされ削られることも多くなってきているせいか立ちあがれない。

 軽く足をひきずりながら、歩いてメインの真ん中に来てからピッチに戻る。おかしい。足のひきづり方が普通じゃない。なんでピッチに戻らせたんだ。もう走れない状態なのが分かる。あわてて島田のスタンバイをさせているのが見える。遅いよ。判断が甘すぎる。

 結局、42分、シンゴに代わって島田投入。仙台サポのカウントもほとんど聞こえない。やはり、今日は声が小さい。やはり木沢の欠場が響いているのだろうか。

 そしてほとんど見せ場のないまま前半終了。お互いにシュートまでうてない。チャンスも作れない。今日は絵に書いたような凡戦。

 コーナーからはオーロラビジョンはもちろん時計すら見えないから、時間の感覚がつかめない。ちょっと心配なのは主審のジャッジがあいまいだったこと。基準が見えない。流すべきところで笛を吹き、流さなくていいところで流す。

 後半が始まる。もう、徹底的に選手を煽るしかない。とにかく攻めてくれ。先制点がほしい。
しかし後半に入っても前半と同じようにミスが多い。シュートが少ない。見てて楽しめるサッカーではない。ただ、選手にやる気がないというわけじゃない。鳴尾がスルーパスをよこさなかった秋葉に激しい口調で怒っているのが分かる。選手達の勝ちたいという気持ちは見える。

 55分、仙台が選手交代。千葉泰にかわって阿部が投入される。ケガが治ったばっかりの阿部だが、決して油断はできない。

 しかし、リズムがよくなったのはアルビの方。阿部がとにかくミス連発。ポストプレーになってからの落としを奪われ、走り込むコースが全然違ってチャンスをことごとくつぶしている。完全に柴、高橋が阿部を抑え込んでいる。

 アルビはなかなかうごかない攻撃的MFにしびれをきらしたのか、瀬戸が上がり、秋葉のワンボランチに近い形になった。瀬戸が積極的に上がって前線へパスをさばいている。秋葉も中盤の底でうまく右に左にミドルパスでボールを展開している。

 そして右サイドにでたボールを鳴尾がキープ。2人のDFにかこまれ、体勢を崩す鳴尾。倒れた鳴尾の腕をふみつけたのはドゥバイッチ。それを見た主審は走ってきてすかさずカードをだす。レッドカード。一発退場。

 これは大きい。仙台の主将であり、DFの要でもあるドゥバイッチが抜けるのはアルビにとってかなり有利になった。当然、選手交代でサブのDFをいれる仙台。FWをかえたということは阿部のワントップになるんだろうか。

 一人多い分、当然のようにボールがうまくまわってきた。しかしシュートまでもっていけない。

 前線の島田のトラップミス、リカルドと藤田のパス出しの遅さなど小さなところで時間がかかってなかなかチャンスが作れない。何回かとったCKもどうもリカルドの蹴ったボールは精度が低く、シュートまで持っていけない。

 おしこまれている仙台、清水監督が3人目の交代を始める。瀬川にかえて越後。正直助かった。前半から何回か瀬川に突破されているし、スピードのある瀬川はアルビにとってもっとも苦手なタイプだから。

 対する永井監督、いまだ動かず。サブの使い方というよりもこの流れをこわしたくないという気持ちが大きいのだろう。しかしリカルドの調子が悪すぎる。プレースキックのことを考えて筒井というのもいいと思うけど。

 阿部のパスミスを奪ったリカルドからスルーパス。GKの1対1になった鳴尾のシュートは大きくバーの上を越えていく。天を仰ぐ鳴尾。焦りの色が見える。

 そして刻々と時間が過ぎていく。10人相手でも点がとれない。残り時間が10分、5分。とうとうロスタイム突入。

 ロスタイムは2分。ここで仙台のゴールキック。石川の蹴ったボールはミスキックになり、距離が短かった。そしてリカルドの正面にきた。しかし目測を誤ったか、リカルドの脇をボールが抜けかけた。リカルドは精一杯体を伸ばし、腕のあたりでトラップ。さすがにこれはハンド。そして警告かもしれないと思ったところ、主審の判定はノーホイッスル。仙台の選手はもちろん、アルビの選手、リカルドでさえもおどろいている。その分、速攻ができずに1度ボールを秋葉に下げる。仙台のゴール裏では激しいブーイングが起こっている。

 そして何人かを経由してまたもやリカルドの足元に来たボールを思い切って右足を振り抜く。ボールは石川の手をかすめ、ネットにつきささる。ゴールだ。とうとう決めてくれた。そして残り時間は1分もないはず。限りなくVゴールに近いゴールなのかもしれない。

 そしてさらに大きくなるブーイング。そうだろうなぁ。新潟であれと同じことやられたら絶対納得できないだろうし。決め手のない両チーム、この試合に決め手を与えたのは主審だった。

 試合終了。そして主審を仙台の選手がとりかこんで抗議しているのが分かる。そしてバックスタンドから乱入する観客がみえた。そして仙台ゴール裏からのブーイング。

 仙台サポにとって最高に後味の悪い試合だったに違いない。そしてアルビにとってはまさに拾いものの勝ち点3である。長いリーグ戦、こういうこともあるとは思うけど結局仙台との試合4回戦すべてに何かしらの事件が起こっている。

 まさにミスジャッジのこわさを思い知った試合だった。それでも勝ちは勝ち。得た勝ち点は3。これは大きい。可能性は少ないものの、まだ数字上では昇格の可能性がある。選手のモチベーションを保つという意味では非常に大きな勝ち点3だったと思う。残り4試合。最終戦にむけてじょじょに舞台ができつつあると思ってしまうのは僕だけだろうか。

【採点と寸評】

GK #1 木寺 5.5
ピンチらしいピンチがなかったなかで目立ったのはスローイングを投げる方向の判断ミス。中央へスローイングすることがどれだけリスクが高いか考えてほしい。ほとんど相手に決定機を作らせなかったからこそ、みずから敵にチャンスを与えるようなプレーは問題。

DF #6 水越 5.0
DFである以上、奪われると即失点につながる。だからこそリスクを避けて、簡単に中盤に渡すプレーが必要。無理に突破を狙い、ボールを奪われる場面が何回もあった。

DF #4 柴 6.5
1度だけフリーの状態でのフィードミスがあった以外はほぼ満点。ロングスローのときにもゴール前に上がってニアサイドでうまくボールを後ろへ流すことができていた。

DF #14 高橋 7.0
フィードミスもなく、ディフェンスでも安定していた。コーチングもしっかりでき、カバーリングも完璧だった。

DF #5 藤田 5.0
1対1で抜かれる、もしくは抜かれそうになってファールをしてしまうという場面が多かった。攻め上がってからもどこにセンタリングを上げるか迷い、敵に詰められてから焦って上げた結果、精度が低く、チャンスに結びつけることができなかった。1度、縦ではなくうまくななめに逆サイドへのドリブルはいいアクセントになっていた。気になったのは攻め上がってから、相手のゴールキックになった際、戻るときはボールを見ながら、自陣に戻らないとすぐにゴールキックを蹴られた場合、ボールを見失う可能性があるということ。また、左足で蹴ることを意識しすぎてパスをだせる範囲が非常にせまくしてしまっていることが今後の課題。

MF #22 秋葉 7.0
いつも通りの献身的で体を張ったチェックもさることながら、ミドルパスをつかってうまく左右に展開し、攻撃の起点になっていた。

MF #7 瀬戸 5.0
周りのポジショニングの悪さもあるが、パス出しが遅く、敵のチェックをうけて、ボールを奪われる場面が何回もあった。またDFから瀬戸にでたボールをダイレクトでDFに下げるパスが雑で、受け手のDFがトラップに手間がかかり、結果的にDF間でのパス回しが遅くなってしまった。

MF #24 式田 5.0
非常に消えている時間が長かった。中盤でのポジショニングが悪く、DFからパス受けられる位置に入ってなかった。中盤の守備にも参加できず、決定的なチャンスを外すなど悪い面ばかりが目立った。

MF #9 リカルド 5.0
結果的に決勝点となるミドルシュートを決めたが、それまではFK、CKを中心にミスキックが非常に多かった。運動量が少ないうえに1対1に弱く、ほとんど守備で貢献できず。スルーパスは丁寧でチャンスになるが、右足で蹴ることを意識しすぎてパスまでの時間がかかり、攻撃のスピードを遅らせてしまっていた。

FW #11 鳴尾 5.5
前半最初はボールがまったく足につかなかったが、じょじょによくなり、得意の体を入れ替えての突破やDFラインの裏を狙うプレーができていた。ただ、シュートの精度が低いのは問題。

FW #17 鈴木 5.5
運動量が少なく、ほとんどボールにからめず。ただボールを持つと突破はできていた。ドリブル突破から右足でシュートをうった際、DFのタックルをうけ負傷。42分に島田と交代。

FW #18 島田 5.0
とにかくひとつひとつのプレーが雑。トラップが大きくなって敵にボールを奪われる場面が非常に多かった。反面、いままで見られなかった体を張ってのボールキープができていた。

監督 永井 6.5
鈴木の交代はあきらかに遅かった。素人目でさえ重傷に見える選手をすぐに交代できなかったのは問題。しかし相手が一人退場になった時点で、交代で攻撃の選手を増やす采配ではなく、あえて交代をせずにあの流れを重視した采配で勝利に結びつけたことを評価したい。