2006.09.04 回帰線

 代表休暇なJリーグ。せっかくなので僕自身初めての「なでしこリーグ」の試合観戦をしてきた。試合はショートパスを繋ぐ福岡を相手にサイドアタックから3-0と快勝。アルビレックスレディースはボランチを経由してサイドからクロスボールをあげるサッカー。左利きのFWが点を取る姿や(22番・上尾野辺『かみおのべ』選手がハットトリック!)オーソドックスともいえるサイドアタックは懐かしい永井元監督のサッカーに良く似ていた。アルビレディースの監督は鳴尾直軌。市陸時代のアルビレックスはこんなところにも受け継がれている。

 僕がアルビレックスを見出したころは典型的なJ2の田舎チーム。2000年は鳥栖と戦って内容でも結果でも負けてリーグビリだった時期もある。当時のチームは僕のアイドルだった右サイドバック木澤正徳の他にも、神田先生や鳴尾直軌をはじめとして、野沢、慎吾、寺川、勲、直樹、木寺、深沢とちょっと前まで主力として在籍していた選手もそろっていた。今のチームを見ていても「よくやってるよなぁ」と思ってしまうのが正直なところだ。外人頼み、大量解雇と言われることもある我がチームだが、実のところ主力になっているのは寺川、慎吾、勲、梅山など他チーム解雇組。「J1で結果を残した選手」というよりはむしろ「新潟で育った選手」をメインにした半自前チームといえる状況にきている。

 先日、浦和レッズの収支が発表されたのを見た人もいるだろう。2004年以前のデータを見てみるとわかる人はすぐわかると思う。収支が0なのだ。想像するに親会社からの予算調整が年末に行なわれて来たのだろう。浦和以外のチームでも親会社を持つチームは多かれ少なかれこんな感じだと思う。観客動員数が少ない割りに、いい選手をそろえているチームなんかは億単位で補填されているなんて噂も有る。先日万博に行ったときに改めて思い知らされたのは、ガンバは当たり前だけど松下電工のチームなんだなって事。ユニフォームスポンサーはもとより、スタジアム看板も松下グループがこれでもかと出まくっている。ひょっとしたらアルビレックスの年間予算に近い額が出ちゃってるかもしれない。今、アルビレックスが戦っているのはそんな相手だ。

 中断以来2勝6敗1分。ホームの大一番で何とか二つの勝ちを拾っているものの、試合結果から見ると明らかに下降線をたどっている我がチーム。監督会見でも、見ている人達も皆が言っている事だけど、内容は悪くなく、むしろ押している試合が多いにもかかわらず、勝負どころで失点して勝ち点を失っているのが現状だ。決めるべき所で決められず、しのぐべき所をしのげないのだからまぁ、当たり前っちゃぁ当たり前の結果といえる。県内で一番下手糞なリーグに所属するチームですら、その日によって出来に大きな波がある。体力の限界まで走るサッカーというスポーツではチームの調子は大きく波を打ちながらシーズンを消化していくものだ。

 ではボトムの状態から再び上昇するためにはどうするべきなのか。やり方は間違ってないんだから自信を持って前向きに進めばよい。これは言葉にするのは簡単だけど、実際は凄く難しい。ちょっとでも疑心暗鬼になってしまうと歯車が回らなくなってしまうことも有る。

 ってことで僕達に出来る事はいつもどおり一つしかない。いつもどおり頑張った選手には拍手を、挑戦したけど駄目だった選手にも拍手を、後ろ向きになってしまった選手には前を向かせるためにもっと大きな拍手を送ろう。原点回帰だ。自分が初めてスタジアムに来て緑の芝生に感動した時の気持ちを思い出し、今日はいったいどんなゲームになるのかを楽しみに待つ。結局それしか出来ないのだから。「俺の新潟」という言葉の意味は「俺=アルビレックス」であるという意味だ。俺達ではなくて俺である意味をもう一度よく考えてほしい。自分があきらめたらそこで終わり。成長するのも、堕落するのも、ぜぇーーんぶ自分次第。文句を言っても前には進まない。あなたが、そして僕が10年早くアルビレックスを応援し始めていたら、今ごろもっと強いチームになっていただろう。こんなことを言うと身も蓋もないが、過去自分がやり始めた趣味が、たった数年の時間で日本のトップレベルに上り詰めた事例が一度でもあっただろうか? 僕らはそれほどまでに奇跡的なことを成し遂げようとしている。だからもっと自信を持っていいし、もっと謙虚になるべきだ。

 僕らの声だけでは1mmもボールは前に進まないのだから。だからこそ、選手を信じて声を出そう。新生新潟は坂を登っている途中なのだ。
2006年9月4日 18時48分 浜崎 一

PROFILE of 浜崎 一
はまざき はじめ 1977年生まれ。神奈川県出身。1999年、新潟大学在学中にJ2に昇格したアルビレックスに出会う。当時のキャプテン木澤選手のクロスに感動しスタジアムに通い、2000年からはゴール裏で観戦。選手のプレーをよく見る現在のゴール裏の流れを作った。29歳の今も現役の県リーガーとして活躍?中。