2005.11.28 もっさりサッカー日記

 チアリーダーがパフォーマンスを終え、後はキックオフを待つだけの数分間。サッカースタジアムの、この何とも言えない「間」が好きだという人は少なくないだろうが、23日のFC東京戦で披露されたスタジアムモザイクの壮大さ、美しさには度肝を抜かれた。満員のスタンドを彩るオレンジとブルーのライン。そして、ゴール裏には、新潟で初の試みとなる「I BELIEVE!」の人文字が浮かび上がる。この時期特有の薄曇りの空が余計にこのモザイクを鮮やかに映し出した。ノリ良く、感嘆の拍手をしてくれた東京サポーターの皆様もありがとう。まさか日本で、そして新潟でこのような光景が見られるとは思っていなかった。ボランティアを含む関係者の皆様には本当に頭が下がる思いだ。

 と、少し前のゲームから振り返ってしまったが、残留も決まった今、中だるみというか、自分の言いたいこともぼやけてしまうのはある意味仕方がないことなので(言い訳です)、今日は、今週行われた2試合をざっくり、もっさりと振り返ってみたい。

 まず、23日、結果として残留を決めたFC東京戦。
 この時期に東京に当たると、どうしてもJ2元年の市陸の風景を思い出してしまう。あれから6年。鮮やかなスタジアムモザイクに彩られた超満員のスタジアムで相まみえることになるとはなんとも感慨深い。JFAとしても、J2創設というエクスパンションが見事に花開いたモデルケースとして、成功を実感できたのではないだろうか。
 さて、この試合、ゴール裏サポーターの声を拾ってみると、「今期最低」「盛り上がったのは試合前のモザイクだけ」と散々な評価だったようだが、そんなに悲観することはなく、少なくとも最近のゲームの中ではかなり面白かったと思う。確かに、東京のパフォーマンスはミスも多く、開幕戦で完膚無きままに打ちのめされたあの姿を想像すると肩すかしは否めないかもしれない。しかし、梶山、今野の両ボランチのボールテクニック、エジミウソンと茂庭のマッチアップなど高いレベルのプレーを見ることが出来たし、新潟の攻撃も、菊地の積極的な攻撃参加(後半、右サイドの深い位置から放った逆サイドへのロングフィードはスタジアムを沸かせたなぁ)もあり、随分活性化していた。お決まりの論評になってしまうが、エジミウソンの2本のシュートのいずれかが決まっていれば結果は逆、むしろ、その後も得点を加え、新潟の快勝で終わっていたような気がする。
 選手交代も、東京が先手、先手を打ち、これが当たったのとは対照的に、新潟は裏目に出てしまったか。パワープレーも、ほとんど機能せず、得点の香りは交代前より薄れてしまった。また、青野はこのコラムでも何度も取り上げているように、テクニックも高く、本当に期待している選手なのに、どうして焦ってしまうんだろう。最初のボールタッチでミスると舞い上がってしまうのは、僕も選手の端くれ、少しは分かる(苦笑)。この辺、試合経験のなさなのか、メンタルの問題なのか、いずれにせよ、プロ選手ならばこの屈辱を克服しなくてはならない。サポーター間でも期待の高い選手なので、あえて取り上げてみた。がんばれ。

 個人的に、23日以降はいつもに増してサッカー漬けの日々だったのだが、それは後日に譲るとして、いよいよ昨日のゲームだ。
 降格も免れ、順位表をみても大きなジャンプアップの望めないなんともモチベーションの維持が難しい試合。相手の名古屋にしてもしかりで、テレビ実況のもっさり感もあって、公式戦ながらも、どこか消化試合の雰囲気が漂う牧歌的な試合だったが、前節、J1残留という最重要ミッションを果たした反町監督は、サポーターへのサービスではないだろうが、久しぶりに心ときめく選手起用をしてきた。3バックの1角に藤井。そして、3トップの1角にも田中亜土夢を起用してきたのである。てっきり中盤起用だと思っていた僕は驚いた。そして、この起用が予想以上にはまっているのを見て2度驚いた。
 大連戦でしか見たことのなかった亜土夢だが、テレビでじっくり見ると、まずしっかりとしたテクニックに驚かされる。本当に小柄なのだが、ボールを置く位置がいいのと、しっかりとした態勢をとっていることで、 名古屋の屈強なDF相手にもボールもキープできるし、プレッシャーのきつい中でも冷静に周囲を見れていた。また、飛び出しという機動力もリマにはない武器で、逆にリマがパスの出し手となることで、ここ数試合感じていた攻撃の手詰まり感も随分解消されたような気がする。そして、本来のポジションに戻ったことで気をよくしたのか、久しぶりにリマのFK(あの距離から決めるとはミラクルだ)で勝利したのだから面白いものだ。
 久しぶりと言えば、ヨンハのプレーも久しぶりにじっくり見れた。ロングフィードのキックフォームは昔のままで(当たり前)、アトムを吹っ飛ばした当たりの強さも健在だった。栗原もそうだったが、元新潟の選手だと、対戦相手としても微笑ましく見てしまうのはいいのか、悪いのか。

 さて、いよいよ泣いても笑っても残すところ1試合。相手は浦和レッズ。逆転優勝がかかっているだけに、いつも以上のテンションと気合いでのぞんでくることだろう。サッカーファンの1人としても、最終節で、こんなギラギラな舞台に身をおけるとは光栄だ。
 浦和には悪いけど、やはりここは新潟が勝たしてもらおう。たまには気合い入りまくりの相手を軽くいなす立場に立ってみたい(笑)。新潟の悪夢として浦和レッズ史に刻まれるような戦いが出来れば、そのとき、新潟にとっても、新たな歴史の1ページが生まれるはず。

2005年11月28日 浅妻 信

PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。