2005.12.29 2005年ズバリ言うわよ~2006年を占う~

 まずはいきなりお詫びから。
 僕としたことが、うっかり〆切日を忘れてしまっていた。言い訳になるが、先週の大停電が痛かった。ただでも忙しい師走のこの時期に、欲しくもないのに強制的に休みをとらされた上(しかも在宅ならぬ在社だ)、これによって、全てのスケジュールは狂い、ついでに僕の曜日感覚も失われた。指摘の電話を夜受けたときに僕の体は文字通り凍った。人体の不思議を身をもって体験したが、願わくは、もっと別な方法で体験したかったところだ。

 もう一つ言い訳を書くと、あまりにもサッカーの臭いがしない週末だったからというところだろう。今週のコラムは、先週の、「総括」を受けて、来年の展望を書こうと決めていたのだが、浦和がワシントンを獲得するなど契機のいい話がバンバン飛ぶ中、我がクラブはあまりに無風で、僕の心からアルビレックスが一時的に存在を消していたのだ。頼むよ強化部。
 と、「大停電」「アルビレックス新潟」と聞いている方が痛々しくなる責任転嫁を披露して本題はスタートする。

 来年の新潟はどうなるか。
 一番大きなポイントは指揮官が交代することだろう。正直、鈴木監督が率いる山形の試合を見てない人間にとって、想像することすら難しい。ただ、僕の持論では、勉強、研究を怠る指導者はいかに優秀であろうとダメである。日進月歩のサッカー界では取り残されてしまう。その点、まだ全国的には無名であるが、反町監督とほぼ同世代で、山形でそれなりの結果を残した彼に白羽の矢を立てたのは、名より実をとった選択として、クラブはいい判断をしたのではないだろうか(まだ結果は出てないけどな)。少なくとも僕は評価したい。
 推測であるが、基本的に反町サッカーを踏襲すると思われる。モダンサッカーを形成する幹というのはそう大差がないので、細部にこそ差はあれど、来年から新潟がいきなりヴェルディに変わったりすることはないのだ。第一、そうであったら、クラブのビジョンを疑ってしまう(笑)。
 偉大な監督の後なのでプレッシャーは並大抵のものでないだろう。どうやらスタッフを連れてくることもないようだし、補強に関してもどれだけ意向が汲まれているかも分からない。J2とはサッカーの質が異なるJ1の舞台に、単身、裸一貫で乗り込んでくるわけで、なんか地味な印象があったけど、実は凄いギャンブラー?(笑)。早くその肉声を聞いてみたいものだ。

 続いて選手を見てみよう。
 前段にも書いたように、監督をはじめ、去っていく選手は多いが、一向に選手が入ってこないのはどういうことだ。それどころか、「来期は彼を中心としたチーム作りを、、」と僕でなくても心ときめかしていた菊地が磐田への復帰を決めてしまった。思わず癇癪を起こしたくなる展開だと思うが、ここはちょっと我慢してみよう。かつてと違い、新潟がターゲットとする選手は、ほかのクラブも欲している選手なのだ。所属クラブの優先交渉期間が終了する年明けを待って、「そうきたか!」と通も唸らす怒濤の発表ラッシュがある、と信じたい。いや、信じなきゃ年を越せないし、さしものギャンブラーも破綻してしまうだろう。
 新潟の補強ポイントは、いやサッカーに限らずスポーツチームはどこもそうだろうが、やはりセンターラインだ。真ん中の幹さえしっかりすれば強いチームが出来る。ポジション的にはセンターバックにセンターハーフ。再び死んだ子の年を数えるようだが、その両方のポジションをこなす菊地が離脱したことは大きな痛手。誰が指摘するまでもなく、このポジションの補強に関しては強化部も総力をあげて取り組んでいるであろうが、その背景には、昨年の目玉の二人が奇しくも右SBで、ポジションがかぶっていたということとは別問題だと思うのは言うまでもない(苦笑)。
 もっとも全く補強は進んでいないが、事実上の補強に該当する選手がチーム内にいるのも忘れてはならない。先日、サポーター間の投票で行われるアルビレックスアウォーズというイベントが盛大に行われたが、海本幸治郎、河原、そして岡山に対する期待というのはかなり大きかった。ともに2年目を迎え、もう言い訳は通用しないはず。新監督の下でサポーターの期待に相応しい活躍をしてもらわないと困る。新潟のサポーターもそこまで甘くない。

 最後に今回のテーマを総論的に論じてみたい。
 いきなりだが、来年は難しい年だ。まず、J1を目指し、それを成し遂げた段階があった。次に、J1へ定着する足固めの段階があった。来年はいよいよ次のステップに向かう最初の年となる。次のステップとは、もちろん何らかのタイトルをとること、すなわち、名実ともにビッグクラブへと進む第一歩を踏み出すと言うことだ。
 何も夢物語を語っているわけではない(これを書いているのはもう明け方になっているが)。これだけの観客動員と施設を備えたチームが、地方の奇跡でとどまるのか、日本を代表するクラブへと変貌を遂げるか、運命はこれからの数年で決まるのではないかと思う。そのためには選手も、クラブも、そして僕らサポーターもより強い意識を持たなくてはならない。3者が共通の認識を持ち、絶対そうなるんだという強い意識と行動を持つことによって夢は叶うと思う。だから、一見矛盾するようであるが、来シーズンはじめ、新チームが結果を出せなくても罵声を浴びせることなく、サポーターは我慢しなくてはならないと思う。サポーターの中には知らない人も多いと思うが、実は反町監督のデビュー時もかなりひどい試合が続いた。でも、僕らは信じていたからブーイングなんて全く思いつかなかった。そして信頼関係で結ばれた僕たちは、その後、新潟のおとぎ話を共に作り上げていくことになる。そう、叱咤も声援も「本物」に裏付けられてなければ何の意味もないのだ。

 書いているうちに早くも開幕が待ち遠しくなってきたなぁ。まだ天皇杯戦っているチームがあるというのに困ったものだ。

 4月からスタートしたサポーターズコラムも今回が最終稿になります。当初、話をいただいたとき、軽い気持ちではじめたのですが(週によっては誰か他の人に振ってもいいかな、とか)、基本的にゲーム終了後から月曜昼までの間と限られた執筆時間の中で、毎週容赦なく迫ってくる〆切は時にプレッシャーとなってのしかかり、ネタがないとき、仕事で忙しいときなどは、本当に叫びたくなるほどでした。最後にオチはつきましたが、よくぞ38週走りきったと思います。終わりの方は随分慣れましたが、そのうち、月曜の早朝に目覚ましをかけ、執筆していた頃を懐かしく思い出すことでしょう(ちなみに一番ハードだったのはぎっくり腰を患ったとき)。
 さすがに読むに耐えられないとまで卑下しませんが、バックナンバーを読み返しても表現が稚拙だったり、プロットがお粗末だっだりと赤面ものの原稿が目に付きます。こんな原稿でも毎週楽しみにしてくださる方がいることを知り、恐縮した次第ですが、曲がりなりにも完走できたのも、こうした読者様、関係者の皆様の支えがあったからに他なりません。また、このような場所を提供してくださったMSNさん、好き勝手な発言を許してくれたクラブには感謝の念が絶えません。僕にとっても貴重な1年でした。この場を借りて、改めてお礼を申し上げるとともに、38週続いたサポーターズコラムの結びの言葉に代えさせて頂きます。皆さん、ありがとうございました!

12月29日 浅妻 信

PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。