2006.10.24 ぼんやりしている暇はない

 清水戦は本当に面白かった。

 公式発表では13000人程度だったが、スタジアム全体を見回してもほとんど空席が見えないぐらいの観客が入っていた。さらに専用スタジアムならではの臨場感も加わって心地よい緊張感がスタジアムに漂う。

 先制されたものの同点に追いつき、逆転ゴールが奪えそうで奪えなかったという悔しい引き分けではあったが、試合内容はとても面白かった。お互いが果敢に攻め合ったこともあるが、個々でみても見所がたくさんあった。トップ下から何度も前線へ飛び出し、攻撃の起点を作った岡山、数え切れないくらい右サイドでアップダウンを繰り返し、チャンスを作った松下。そしてこの日も最高だったシルビーニョの配球。長短を織り交ぜつつ絶妙のタイミングかつ絶妙のスピードで受け手の足元へピンポイントでボールを送る。

 清水も負けていなかった。リーグ屈指のキープ力を持つシルビーニョに対して伊東輝がファールすることなくうまく体を寄せてボールを奪う。森岡の読みを活かしたインターセプトでは何度もカウンターにつながれてしまった。アレシャンドレのサイドチェンジやボール扱いの巧みさ、マルキーニョスとの連携もとても脅威だった。
 もちろん象徴的だったのがゴールシーンで、マルキーニョス、矢野貴章、共に素晴らしいゴールだった。

 この好ゲームを引き出したのは何かというともちろん両チームの選手の頑張りであるのだが、それだけではなく観客の熱気も大きく関係していると思う。当然ではあるが、優勝争いとかけ離れた試合では、どうしても凡戦になりやすい…。スタジアムに熱気、緊張感が生まれにくい。空席が多く、拍手も歓声もブーイングも少ない。

 そして…そのように、相手によってスタジアムの緊張感に大きな差が出るのがビッグスワンなのである。

 上位相手にはスタジアム全体が熱気を帯び、良い緊張感を生み出し、好ゲームを引き出す。一方、下位チームが相手の場合、決して油断するわけではないのだろうが、スタジアム全体がぼんやりしてしまう感は否めない。簡単に勝てる相手なんてJ1にはひとつもないことをみんな知っているのだが。自然とピッチ上もぼんやりし、試合結果も自然とぼんやりしてしまう。そう、京都戦のように。

 次節の相手は16位アビスパ福岡である。僕らが0-7で負けたジュビロ相手に前節2-1で勝利している。さらにアビスパにはアウエーでは0-2と完敗している。油断できる要素なんてまったくない。もう京都戦のようなぼんやりした試合は見たくない。清水戦のように緊張感のある好ゲームが見たい。そのためには観客ひとりひとりが気を引き締めてビッグスワンに足を運ぼう。良い緊張感を持ったビッグスワンは何よりもチームへのサポートになる。良いプレーができるのは良い選手、良い試合を引き出せるのは良い観客。

 今週末も選手に向けて大きな拍手と歓声を。良い観客には良い結果がついてくる。

2006年10月24日 14時06分 岡田 正樹

PROFILE of 岡田 正樹
おかだ まさき 1978年生まれ。新潟出身。アルビレックス初観戦は99年のJ2開幕戦から。以来、ほとんどの週末をスタジアムで過ごす生活を送る。6歳からサッカーをはじめ、現在は新潟県リーグASジャミネイロでプレー。好きなサッカーの楽しみ方はやること、見ること、書くこと、読むこと、考えること。