2006.04.24 満員のスタジアムがもたらすたくさんの幸せ

 2008年北京五輪出場を目指すU-21日本代表監督の候補として名前が挙がっている反町康治氏、世間一般のイメージではなにやら「クールな理論家タイプ」と思われているふしがある。もちろんそれはとても大きな間違いである。

 最終戦となった天皇杯ジュビロ戦後の記者会見で号泣した姿は有名だが、それ以外にも勝てばニヤニヤが止まらず、負ければ顔を紅潮させて怒りを露にする。これほど感情を表す監督はそれほどいないのではあるまいか。ビッグスワンのこけら落としとなった京都戦試合終了後、大ブーイングのなか退場する審判団に向かって顔を真っ赤にさせながら殴りかからんばかりの勢いで抗議に向かう反町さんがいた。コーチが羽交い絞めにしながら必死に止めていたが、もし止めなかったら大変なことになっていただろう。それでも試合後の記者会見では「次の試合に向けて選手のモチベーションを下げさせないため、あえてあのような行動をとった」と簡単に嘘ぶいてしまう。天性のひねくれものだ。

 薄暗い部屋で眠そうな表情で質問に答える、スウェットの上下を着て頭には軽く寝癖が付いていた。背後に見えるベッドの上には無造作に服が置いてあり、テレビとビデオデッキが見える。まだ新潟の監督になったばかりの頃のテレビインタビューである。スーツとお洒落な眼鏡をかけたスタジアムでの姿は多分虚像でこちらが本当の姿なのだろう。多分、前日遅くまで対戦チームのビデオを何度も何度も見返して徹底的に研究していたのではないか。相手の良さを消し、弱点を突く。言葉にするのは簡単だが、そのためにどれだけの時間と手間をかけて分析していたのだろう。一見受け身のようで実は主導権を握りながら、かつ「スペクタクル」なサッカー。このサッカーが多くの観客の支持を集め、「スポーツ不毛の地」新潟でワールドカップスタジアムを満員にするという快挙を成し遂げた。インターネットや衛星放送で得られる膨大な情報を分析し、頭に叩き込む。サッカーに対する情熱は誰にも負けない。そこが反町さんの強みだろう。

 「アルビレックス新潟で一番素晴らしいのは満員のスタジアムでありサポーターだ。この力は何物にも変えがたい。スタジアムに足を運び続けてくれたサポーターに感謝したい。今後もこの力を絶やさず続けて行って欲しい」。感謝をするのはこちらの方だ。4万2300倍は感謝している。満員のワールドカップスタジアムでトップリーグのサッカーが見られる幸せは何物にも代え難い。

 年代別とはいえ久しぶりに日本代表を心から応援できそうで楽しみだ。その中には亜土夢や河原、藤井がいるはずだ。もちろん代表戦はビッグスワンでお願いしたい。反町さんが座るビッグスワンのベンチはホーム側しかありえない。

2006年4月24日 岡田 正樹

PROFILE of 岡田 正樹
おかだ まさき 1978年生まれ。新潟出身。アルビレックス初観戦は99年のJ2開幕戦から。以来、ほとんどの週末をスタジアムで過ごす生活を送る。6歳からサッカーをはじめ、現在は新潟県リーグASジャミネイロでプレー。好きなサッカーの楽しみ方はやること、見ること、書くこと、読むこと、考えること。