6月といえばジューンブライドに代表される結婚式シーズンでもある。先週の土曜日も我がサッカーチームの仲間の結婚式があったため、ナビスコ予選リーグ最終戦は長岡に向かう車中のカーテレビでの観戦となったが、前半からのゴールラッシュ(しかもみんな鮮やかなゴールだ)に車内は大騒ぎ。今からでもUターンしてスタジアムに向かうべきであるとの強硬論も飛び交う中、後ろ髪引かれる思いで、後半戦を前に車を降り、式場に向かった。
元野球部の意地にかけ、新郎の顔めがけて真剣にフラワーシャワーの花を投げつけている頃、新潟の予選敗退を知った。浦和相手に3-0で勝っても上に進めないとはどういうことだ、チェアマン。逃した魚は大きいと言うが、敗退が決まった瞬間、「8枠」がとてつもなく貴重なように思え、9位の僕らとしては今更ながらそこに入れなかったのが悔しく思えてくる。サポーターの中でこの日唯一悔しくなかったのは、目の前で満面の笑みを浮かべている新郎新婦だけであろうが、この悔しさは続く披露宴でぶつけることにし、その後の2次会で何も食えなくなるぐらい食いまくった(最近ではデザートバイキングなんてあるんですね)。おめでたいのかおめでたくないのかよく分からなかった土曜の午後だが、まぁ、浦和相手に3-0で勝ったし、二人は幸せそうだし、なんだかこっちもハッピーになってきたぞ。
さて、6月といえば、もう一つ、恒例のサポーターズCDのレコーディングの季節である。毎年、もっと早い時期に始められればよいのだが、新戦力の選手がどんなプレーをし、また、チームに馴染んでいるか(戦力になっているか)が分かるには、やはり数ヶ月を要する。また、文字にすると長いので、詳しい説明はここでは申し上げられないが、煩雑な事務作業等も存在するため、春先から準備を進めても、結局はこの季節のレコーディングになってしまうのだ。ということで、私的にはここ数年、6月はCDの季節となっている。
サポーターズCDも実に4作目となった。4作目と聞くと、すっかりお手の物だね、との印象を受けるかもしれないが、それはとんでもない話で、毎年、毎年新たな難題にぶち当たっている。今年で言えば、4作目に伴うマンネリ化をどう打破するか(楽曲面だけでなく、レコーディング参加者自身のモチベーション)。そして、これは今年ならではのトピックなのだが、昨年、某プロ野球チームの私設応援団の起こした著作権法違反事件の影響で、各出版社とも非常に慎重になり、曲の使用許可がなかなか下りてない(審議中)という状況にあった。これはどういうことかと説明すると、要は、曲はおろか歌詞も決められないのである。そんなわけで、いつにも増して不安要素いっぱいで当日を迎えることになった。
レコーディングという言葉からは、華やかで楽しそうなイメージがつきまとうが、実際は文字通りの「作業」で、体力、とくに忍耐力が要求される過酷なものだ。主催する方としては、いかに参加して下さった皆さんが快適にやっていただけるかを考えたいが、毎度のことながら、進行が不慣れだということと、今年の場合上記のようなゴタゴタがあって(歌詞、メロディが流動的)、例年以上に迷惑を掛けてしまったかもしれない。
しかし、怪我の功名ということわざがあるとおり、結果的にはこれがいい方に転がった。ラグビーのチャリティマッチと重なったこともあり、参加者は昨年のBUBBLEGUNのおよそ半数にとどまったが、これがアットホームな雰囲気を醸し出す適正人数であったこと。主催が頼りないこともあって、参加者全員が色々アイデアを出し、文字通り全員でつくりあげていくことが可能になったからだ。
この日、収録した曲は全て新曲である。歌の指揮は、ゴール裏のコールリーダーを軸に、主としてその曲を提供した者が中心となって行ったが、それぞれのキャラクターが出て、非常に楽しい。また、こういったステージ上の進行を一切任せたことによって、私などは、裏方として楽屋で次の曲のメロディ、歌詞の検討にあたることが可能になった。
メロディを含む、歌詞のアイデア、提案が参加者からどんどん出てくる。レコーディング中にも随時変更が加えられる。壇上でボードを掲げた者が、曲の入りのタイミング、歌詞を伝える。途中、MSNメッセンジャーの機能を使っての東京会場とのビデオチャット、スペインにおける最高峰の指導者資格を持つ佐伯夕利子さんのトークショーを交えたが、作業は延々19時近くまで及んだ。人数は少なかったが、全員が一体となって作った本当に熱い作業だった。
正直なところ、サポーターズCDのプロデューサーとして僕ばかりにスポットライトがあたるのは非常に居心地の悪いものだった。たとえ、CDの製作とはいえ、主従関係に立つのは気持ちが悪いし、まして実態を反映していないのだから推して知るべしである。そう、CDはこのようにみんなで作り上げるべきものなのだ。生意気なようだが、4作目にして、ようやくサポーターズCDのあるべき方向が見えてきた気がするし、ちょっと理想に近づけたかなという気がした6月の午後であった。
2005年6月13日 浅妻 信
PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。