さぁ困った。
何が困ったかというと、このコラムの締め切りが迫っているからだ。週明けから行く出張のための資料整理で土日とも出勤している。そこに夏風邪をこじらせ体調がよくない。予めコラムを書いておこうかと、いつも思っているのだが、実際はそうはいかない。週末のゲームを見てからにしようと、自分に言い訳をし、なかなか書かないでおくが、結局、川崎戦を見たからといって、何かインスピレーションが閃くワケでもない。シロウトである僕はゲームレポートを書かないようにしているので、川崎戦を見たところでどうしようもない。と言い訳をさんざ書き、文字数を稼いだところで、本題に移ろう。
私が編集長をやっている「アルビウェイ」について今回は少し書いてみたい。
アルビウェイを発行するようになったのは、昨年の6月。創刊号の前に第0号というのを発刊している。今は亡き神戸との一戦(6月4日)でこの第0号を出したのが最初だった。
この頃、ゴール裏サポーターの一部で「昇格後アウェイに来る人が減ったよなぁ」という意見があった。僕自身も少なからず感じていたが、この時点ではアウェイ専用フリーペーパーを発行するなんて思いも付かなかった。
その後、あれは埼スタだったと思うが、ゴール裏の中心から離れた場所で、一生懸命に応援する2人組のサポーターがいたのだが、なんと「アイシテル新潟」の歌詞を「完璧に」間違えて歌っていた。新潟的にチャントでは一番のメジャー曲「アイシテル新潟」であるにも関わらずだ。しかし、本人たちは間違っていることさえ気付かない。だが、精一杯歌っている。声を出すことがすべてに優先されるのだとすれば、歌詞が間違っていようと、選手の後押しをしていることになる。しかし、本人たちが知りたいにも関わらず、知る機会さえ、知る術さえ、ないのではないか。そうだとすればなんと不幸なことか。その時そんな風に思ったのだ。県外でアルビレックスの情報を伝えたい、サポーターの歌も歌詞も伝えたい。何かのちょっとしたきっかけがあって、県外の新潟人がアウェイゲームに合わせて集まることができれば…。それはとてもステキなことだし、応援する人も増えていくのではないか。そんな動機作りのためにと、アウェイ専用フリーペーパー発刊へ繋がっていく。
地元新潟では、アルビレックスの情報が溢れかえっている。専門番組の内容を各局が競って放送している。サポーターが作るラジオ番組さえあった。雑誌も新聞もこぞってアルビ情報を流し、欲す欲せずに関わらず、情報が入ってくる。(それでもまだ情報が欲しいと思うのは惚れる者の試練なのだが。)
しかし、県外に出ると状況は一転する。皆さんご存知の番組「スーパーサッカー」や「やべっちFC」くらいからしか情報はない。選手の個別情報なんぞゼロと言ってもよい。確かにインターネットで情報は入手できるが、応援し始めた人にとっては、何を見てよいやら分からないだろう。実は、これを一気に解決できる方法がひとつだけある。それは、新潟が絶えず優勝戦線に絡み、日本代表選手を数多く送り込むこと。だが、残念ながらこれには少し時間が必要だ。
そんな流れの中で、「フリーペーパーを作ってみたらどうだろう」と僕は突然言い出したのだが、周りのサポーター仲間から「やめとけ」と忠告されると思っていた。いや、して欲しかった。ところが、皆はヤレヤレの大合唱。うぅ、言い出さなければよかった。と一瞬思ったがそれも後の祭り。結局発刊への道へ一直線、となった。
勢い余ってフリーペーパーと言ってしまい、やることになったが、よくよく考えてみると大きな問題がふたつあった。ひとつは「アウェイ」であること。もうひとつは「印刷代」。
実は、最初ゲリラ的に配ろうとした。しかし、そうもいかんだろう、とういうことで、試合当日、警備の人に掛け合って配ることにした。もちろん許可は出たのだが(その頃は紙面内容が浅かったこともある)、この方法はすぐさまチェックが入った。とある方から、「相手チーム主催のゲームには相手チームの事情が存在する。予め配布の許可を取るべきだ」とのご意見を頂いた。当然だった。そんなことで、色々と各方面からのご協力を頂き、今は相手クラブに内容の確認をしていただいた上で、事前の許可を得て配布している。
2番目の問題は「印刷代」をどうするかだった。最初は原稿を誰でも印刷のできる形式にした上で、僕ら編集部数人で少しずつ印刷し持ち寄って配布した。最初はそれでもよかったが、紙面の内容が充実していく中で、もう少し多くの人に見せたい、という欲もあったし、当初の目的である、「県外に住む人達への情報提供」という部分では、枚数が用意できないがために、その目的を果たせないでいた。どこかスポンサーを探そうとプレゼン用の資料を作り、あちこち営業に回ったが、僕らが「広告を載せないこと」という無謀な要求をしていたため、上手くいくはずもなかった。というか、そういうのはスポンサーとは言わないが。
そこで、今シーズン初めにプリントサポーターという名の下に「少しでもいいからプリントの協力をして持ち寄ってくださいませんか?」、という協力依頼をmsnのブログ上で行なった。初めは食い付きがよくなかったが、それでも少しずつ増えていき、相当の枚数が集まるようになった。ちょっと場違いであるが、この場でプリントサポーターの皆様にお礼を言いたい。ありがとうございました。色んな人のご協力で出来上がっているこのフリーペーパーもご覧の通り、広告が一切ない。つまり当たり前だが一銭も儲けていない。そんな僕らの心意気に賛同してくれたのか、今は印刷代を気にせず発行ができる状況になっている。
なので、このペーパーを受け取ることがあったら、お願いですから家まで大事に持ち帰ってください。
今年から紙面のイメージが昨年と比べて大きく変わったのをご存知だろうか。実は今年からプロのデザイナーが編集部員として加入してくれた。これが今年の大きな補強であり成果であるのだが、もうひとつ弱い部分を補強したいと僕は考えている。それは何を隠そう「編集長」だ。気概とアイデアを持った方、誰かやりませんかね?
2006年8月21日 篠崎 徹
PROFILE of 篠崎 徹
しのざき とおる 1966年生まれ。東京都出身。W杯やアルビレックスJ1昇格など新潟サッカー界で一番オイシイ時期を新潟で過ごす。2004年に東京へ転勤。以後アウェイでのアルビレックスを盛り上げようと日々奮闘中。