2006.10.02 魔法の粉をふりかけろ

 アウェイの勝利は格別のうれしさだ。久しぶりのアウェイ勝利ってこともあるんだけど、7年と2カ月ぶりになるFC東京アウェイでの勝利(99年江戸川競技場で勝って以来!)と言うのがさらにうれしさを引き立てる。ツアー参加メンバーはみんな気が大きくなって帰りのバスの中では振舞い酒が飛び交い、何度か繰り返し見させられている「下妻物語」の上映にも誰も文句を言うことはなかった。15台近くのバスが新潟から出ていたようだけど、どのバスも大体似たような環境だったのではないだろうか?

 前節甲府戦で見事勝利の立役者となったアトム(田中)はこの試合でも輝きあふれるプレーを連発。ただサッカーが上手いだけの小僧っ子ではなくチームのために献身的に走るという実に新潟らしい選手。松下もそうだけど本当にいい選手がアルビレックスに入ってくれた。アトム以下の中盤の選手が献身的にボールを追い、コースを限定しているのでDFは余裕を持って対処することができる。確かに一度は東京のロングボール大作戦に負けてしまった新潟だが、そこは千葉、慶治(海本)もプロ。それ以外のプレーでは強く体をよせ、セカンドボールに対するアプローチも早かった。強い守備意識と言うのはどんなサッカースタイルでも必要になってくるもの。この日はサイドバックの光(三田)、内田もセンターまでカバーに来るなど、自分のエリアを越えた守備をみんなが見せてくれた。大沢親分が見に来ていたら思わず「天晴!」を出していたことだろう。

 盛大なバス宴会はまだまだ終わらない。ほろ酔い加減のなか、つまみのハッピーターンを食いながら今までの試合を振り返ってみる。ここ10試合で1勝1分け8敗と無敵の弱さを誇っていたアルビレックス。苦手のアウェイが続いたこともあり、それこそ「一度失点してしまうと止まらない」という悪循環を断ち切ることができなかった。とにかく苦しかった。立ち直るきっかけは田中アトムのトップ下起用、そしてアトムから始まる中盤のすばやいプレッシング。言葉にするとわずか一行。答えを見つけてしまえば何のことはないのだが、これができるまでが大変だった。

 指についたハッピーターンの粉をなめながら更に考えを進めてみる。新潟が負のスパイラルに落ちてしまったきっかけは浦和に勝った後の大分戦から。「内容は悪くない」というありがちな呪文を言い訳にして「守備の弱さ」と「個の弱さ」というものを見ないふりをしてきた。それに気づくためにガンバ、磐田、名古屋と無様な負けを食らう必要があったんだろう。立ち直る方法ってのには戦術、システム、準備などいろいろはあるんだろうけど、最終的には「開き直り」と「きっかけ」が最も重要。選手は開き直り、僕らはきっかけを与えた。それがセイゴローで僕らが選手にふりかけた魔法の粉の正体なのかもしれない。

 持っていたハッピーターンもついに食べつくしたのでそろそろ考えることをやめよう。いい加減酔いも回ってきた。どうでもいいけどハッピーターンはアルビレックスのアウェイ用の公式お菓子にしたほうがいいと思う。あの魔法の粉の美味さはもちろんのこと、いかにも勝って帰ってこれそうな名前がいい。ってことで皆さん。日本平にはハッピーターンを持っていこう。(個人的にはカレーせんべいも大歓迎だけどな!)

2006年10月2日 11時59分 浜崎 一

PROFILE of 浜崎 一
はまざき はじめ 1977年生まれ。神奈川県出身。1999年、新潟大学在学中にJ2に昇格したアルビレックスに出会う。当時のキャプテン木澤選手のクロスに感動しスタジアムに通い、2000年からはゴール裏で観戦。選手のプレーをよく見る現在のゴール裏の流れを作った。29歳の今も現役の県リーガーとして活躍?中。