2007.10.22 イサオ・ホンマ・ワナビー

 さて、土曜に行なわれた等々力での死闘を清々しくスルーして本日の話題に移ろう。スルーかよ。

 毎年シーズン開始前にあちこちで公表されているJリーグ選手名鑑。あれの「好きなサッカー選手」の項目を読むのが好きだ。つらつら眺めていると、その選手がどんなプレースタイルを目標としているのかが一発で分かっておもしろい。例えばCFWの選手なら、V・ニステルローイのDF背負ってボールキープして反転しながらシュート…みたいなのに憧れるんだろうな、とか、上背のないDFの選手がカンナヴァーロ好きって、あー分かる分かる! とか。国内一線級の選手達が、サッカー少年のような目線で憧れの選手を語る。微笑ましくも羨ましい光景だ。

 そんな選手目線になりたくて、30代も半ばにして細々とフットサルを始めた(すいません、前半部分嘘です)。1年前まで殆ど運動らしきものをしたことがなく、蹴り始めてから10カ月も経つのに未だにインサイドキックが思うように蹴れないときもある。最初は「カラダ動かすのは楽しいなあ」ぐらいのモチベーションだったが、ゲーム形式の練習をいくつか重ねてガチの試合にも出させてもらうようになってくると、ああこれじゃダメだ、もっと上手くならなきゃ! という自然な欲求が生まれてくる。

 同時に、Jリーグの試合を観る目線も変わってきた。硬直した試合展開でビルドアップから攻撃の機会を伺っているようなときに、よくスタンドから飛ぶ声援(というか野次)の定番として「走れよー」「前(にボールを)出せよー」「気持ち見せろよー」というのがあるが、さあシュートだってときに気持ちぱんぱんにこもってても入らないものは入らないし、走れよと言われても矢野貴章みたいにピッチの端から端までチェイスできる体力がないんだよコンチクショー。苦し紛れに前にボール出してもパスコースが空いてなきゃアウトだコノヤロー。

 何か激しく低レベルなボヤキになっているが、自分でボール蹴ってみるとJリーガー全員がキラッキラに輝いて見えてくるのは本当だ。県リーグでプレイしている友人が「自分でサッカー(フットサル)始めると、野次って言えなくなるでしょ?」と言っていたが、こういう事だったのか…と今更にして思う。なので味方への野次に命がけな一部観客の皆様には、いいから試しに一度ボール蹴ってみればいいですよとか思う訳ですよ。ムダに上から目線で。…閑話休題。

 もうひとつ観方が変わってきた点といえば、ドリブルだエラシコだラボーナだといった眩い個人技(わたくしには十分眩い)を惜しげなく披露する選手より、止めて蹴って…という基本を、攻撃でも守備でもパーフェクトにこなす選手の凄さがジワジワと理解できるようになってきた。国内のトップリーグでプレーしてるんだからそんなの全員ができて当たり前かもしれないが、パスを受けて、ボールをキープして、出して…という一連の動きに、どれだけ基本を忠実に練習し続けてきたかは如実に出るものである。

 そこで本間勲だ。ボランチというポジションの特性もあるかと思うが、以前から彼はパスを決して無駄にしないなとは思っていた。攻撃の起点になるとしても、一旦ボールをうしろに下げて攻撃の機会を伺うにしても、まったく無駄がない。きちんと受け手の足元に収まり、次に繋がるパスが出せている。わたくしのチームの鬼コーチが「勲のボールキープの動きをよく見てみろ、相手の体の外側に回りこむことで周囲360度を見回してパスコースを探してるんだ。あれができれば、そのあとのパスは確実に繋げるぞ」といったようなことを述べており、実際試合を観ていたら本当にそんな動きがあったので「おお! コレか!」と思った次第。

 土曜の川崎戦でも、相手のCKからかなり致命的なピンチになりつつあってディフェンスに入った全員がハイボールを追いかけようとした瞬間、本間選手だけがグラウンダーで来たクロスを真っ直ぐに弾きにいって難を逃れる…というシーンがあった。

 あれは有体な感想を申すなら「後ろにも目が付いてんじゃね?」という、理解できないが故に超常現象に逃げるようなソレになりがちだけど、そうではなくて本当にケアするべき所に目が行き届いているのだろう。ああ、いいなぁああいうの。あれができるようになりたいな。フットサル歴10カ月弱の素人を、生意気にもそんな風に思わせるぐらいだから、実際に未来のJリーガーを目指してる子供たちなんて尚更だろうと思う。

 これまたボール蹴り始めて1年未満のチームメイトと、自分等のプレイの未熟さをボヤキあいつつ「どんな選手になりたい?」という話になった。答えはなんと、ふたり揃ってが異口同音に「本間勲!」であった。そう、我々の夢は選手名鑑の「好きなサッカー選手」の欄に、ロナウジーニョでもメッシでもなく本間勲と威風堂々書くことだ。なんの選手名鑑だよ。

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 冗談抜きで、当コラムを御覧の皆様、騙されたと思って試しにボール蹴ってみませんか。初心者だからって全然平気。ブランクがあったって大丈夫。運動神経ゼロに等しいわたくしが言うんだから間違いありません。カラダ動かす楽しさと、上手くなりたいというモチベーションが一緒に付いてきます。そして、わたくしたちが毎週末目にしているアルビレックスのサッカーが、プレイヤー目線で俄然面白く見えてくることも、勿論保証しますよ。

2007年10月22日 16時59分 平山 明美

PROFILE of 平山 明美(ひらやま あけみ)
1971年生まれ。福島県出身。2003年からアルビを見始めて現在に至るが未だニワカ者を自覚。サッカーの観方もルールもまだまだ分からないことが多いので、愛と精神論と萌えと勢いのみでサッカーを語る。オフサイドはつい最近覚えた。Yes!生涯勉強!