それにしても暑い。
プロフィール欄にもあるように、僕は関西で8年ばかり過ごしていた。関西の夏は半端じゃなく暑い。新潟の冬も辛いものがあるが、不快という点では関西の夏に軍配だ。タイマーセットしたクーラーが切れる30分後には寝汗で目が覚めるため、インターネットの常時接続より一時代早く、クーラーの常時接続を余儀なくされていた。
体を休めること(寝ること)すらままならない中、ましてスポーツなど出来るわけがなく、現在、Jリーグは夏の中断期間中。むろん、中断期間だからといってのほほんと休んでいるわけにはいかない。まとまった時間がとれるこの期間を利用して各チームはキャンプを行い、チーム戦術の修正、強化に当たっているのだ。
レベルの差は著しいが、中断期間の有用性はアマチュアも共通で、我がジャミネイロもこの週末、夏季キャンプと称して、寺泊まで行ってきた。気を失いそうなぐらいの暑さの中(実際二人が熱中症で倒れた)、チーム全員が一つの目標をもってトレーニングに励むことは、戦術面の強化以上に、精神面の鍛錬に役立つ。失われた部活時代のナンセンスさ。逆境に打ち克つ強い精神力。科学では計ることの出来ないプラスアルファを我々は得たのではないかと思っているが、それはプロとて同じだろう。というのも、この2日間を経て出した結論としては、たとえ、トレーニングであろうともこの暑さの中ではサッカーはやるものではないということだから(笑)。
さて、来るべき後半戦に備え、各チームともキャンプを通じ戦力アップに努めているが、キャンプと並ぶ、いや、それ以上の実効的な手段が補強である。下位に沈む某チームなど、チームごと総入れ替えの勢いで積極的な補強を行っているが、振り返れば、新潟も、過去、色んな選手がシーズン途中に加入してきた。
まず、補強に当たり一番手っ取り早いのは、マーケットが広いため、選択肢が多数用意されている外国人選手だ。昨年後半の快進撃を支えたオゼアスが記憶に新しいが、J2時代にはマルキーニョ、そしてアンドラジーニャなどが加入して、それぞれチームに貢献している。
いや、アンドラジーニャだけは、彼の本来のポテンシャルからすればどうだったかと思うが(苦笑)、サポーターとしては、等々力におけるデビュー戦の鮮烈さが忘れられない。振り向きざまにうった、左足の強烈なドライブシュートで、当時まだあったVゴールで勝利したものだから、アウェイスタンドは上を下への大騒ぎになったものだ。
あと、成功した例と言えば、2000年の深澤、昨年の松尾が上げられる。マサはご存じの通り、その後、新潟史上もっとも愛された選手の一人になったし、松尾も新潟の延長オファーを蹴った以外は(笑)、及第点以上の活躍をしてくれた。
成功の一方には失敗もあり。怪我などで充分に活躍できず、新潟のユニホーム姿を思い出せないぐらい選手もいる。そんな中、異色なのは、現在横浜で活躍中の大橋であろう。俊輔2世のニックネーム通りの高いテクニックは認められたものの、新潟では慣れない3列目でのプレーを求められたためか、ベンチ外の日々が続くなど活躍したとはとても言えず、あまり、惜しまれることなく横浜に返却されていった。
新潟でプレーをしたことのある選手の動向はずっと気になり、チェックしている人も多いと思うが、この大橋のブレイクにはびっくりだし、素直に嬉しい。サッカーは組み合わせのスポーツというか、監督の好み、チーム戦術等が如実に出る競技なので、大橋の場合は、単に新潟の水に合わなかったということだろう。だからこそ、試合に出られず、不遇をかこつ選手たちが積極的に他チームへの移籍を求めるわけだけど。
そんなわけで、新潟にも今期2名の選手が、この中断期間中に移籍してくることになった。身体能力に秀でた(先輩である尾崎の保証つき)、逆輸入Jリーガー千葉。そして、数年前、国内外のクラブで争奪戦になった、この世代のエース格菊地直哉である。
菊地といえば、名門清水商の主将でもあり、その時代の副将が新潟小針中卒の山田直(すなお)君であったため、比較的情報が入ってきやすい。複数筋の情報をまとめると、華やかな履歴とは裏腹に、とにかくハートの熱い、気持ちでプレーをする選手のようだ。身体能力の高さは言うに及ばず、指示もガンガン飛ばす。球際の争いもガツガツ行く。まさに気合い系だ。こういう選手は人気が出る。
しかし、正直言えば、Jリーグ入り当初の期待ほど活躍できていないのも事実。そして、過信はしていないだろうが、新潟に移籍してきたからと言って無条件に活躍の場が与えられるわけではない。むしろ、僕が前段で引き合いに出したまでもなく、シーズン途中の移籍は難しいことが多いのだ。
は。待てよ、菊地。これは逆境だ!逆境とは思うようにならない境遇や 不運な境遇のことをいう(映画:逆境ナインより)。全力でない者は死すべし。逆境を乗り越えることができるのは、不屈の精神力だけなのだ。
間もなく後半戦スタート。チームのパフォーマンスもさることながら、菊地直哉がこんな逆境に打ち勝っていくドラマも楽しみにしていきたいと思う。
2005年8月8日 浅妻 信
PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中。