1999.11.06 第34節 MatchReport 新潟×大分

1999年11月6日(土)14:00キックオフ
於 新潟市営陸上競技場
アルビレックス新潟 対 大分トリニータ  ○ 2v-1

 
 11月にしては出来過ぎなくらいの天気の良さ。新潟の11月といえば良くて曇り、大体小雨のイメージだったが、今日は寒くもなく、暑くもなく絶好のコンディション。

 そしてアウエーで2連勝、ホームに戻ってきてアルビが迎え討つのは大分。現在3位ながら2位東京との勝ち点差は2。十分昇格の可能性がある。

 対してアルビは数字上では昇格の可能性があるものの、大分ほど現実味はない。この差がモチベーションにどうひびくのだろうか。

 大分はウイル、チェが出場停止。チームの中心選手ではあるが、前回のホームで試合でもウイルが出場停止、チェは前半途中で交代だが、結果は2ー0の完敗。ほとんどチャンスらしいチャンスを作れなかったことを覚えている。前回の大分での試合でもかなり押し込まれつつも、高橋の1点でかろうじて勝利。つまりいままでの試合はずっと押し込まれてきていることになる。

 アルビは木沢が久々に新潟市営のピッチに立った。単に11人の中の1人ではない。木沢がいるだけでピッチに緊張が走る。圧倒的な存在感をただよわせる主将、やはり木沢の代役はいないことを確認させられてしまう。

 大分が勝てば東京との昇格争いが激しくなってJ2は面白くなるのかもしれない。しかし、そんなことは関係ない。大分に勝つ。そして新潟市営で選手の喜ぶ顔が見たい。

 スタメンは吉原、木沢、柴、高橋、中野、秋葉、瀬戸、水越、式田、リカルド、鳴尾。4ー5ー1のフォーメーションらしい。サブは木寺、藤田、筒井、島田、サウロ。

 新聞によると永井監督は前半は守って後半勝負するとのゲームプランをたてているらしい。

 最近、ホームで勝てない原因のひとつに守らなくてはいけないところをあせって前にでてカウンターでやられるということが挙げられる。守る意識とホームだから攻撃的にいかなくてはいけないという意識のバランスが悪く、失点をうけるのだ。今日はなんとか我慢して最後まで守り切れるのだろうか。

 大分のキックオフで試合開始。ボールをすぐに奪うものの、取り返されサイドをかえられる。すぐに全員が戻って守備陣型を整える。鳴尾だけが前線に残ってディフェンダーを追いかけ、その後ろでリカルドが鳴尾をフォロー、右に水越、左に式田、ボランチに秋葉と瀬戸が基本陣型らしい。

 大分がボールを持っているときは最終ラインを押し上げ、中盤をコンパクトにし、こぼれ球を5人のMFを拾って厚みのある攻撃ができている。アルビがボールを持った際はCBの柴、高橋がすっと下がり、後ろにパスコースを作るので、前がふさがれたら後ろに戻し、後ろから組み立て直す。これなら大分に速攻を許さずに試合をすすめることができる。ほぼ理想的な形が作れている。まさに作戦通り。あとはセットプレーだけ注意すれば失点はないのではないだろうか。そう思うくらいの良い立ち上がり。

 大分は前回とは違い、3トップというよりも神野のワントップに近い形。中盤の押し上げが遅く、神野のボールが入っても、フォローがなく囲まれてボールを奪われる場面が多い。

 前回は大分の3トップに気を取られ、中野、木沢が上がれなくなっていたが、今回は逆で木沢、中野を気にしすぎて、大分のFWが上がってこれなくなっている。サイドの主導権はアルビが握っている。

 大分の選手は全体的に足が止まっている。絶対に負けられないというプレッシャーからだろうか。特に中盤の運動量が少なく、アルビが完全に中盤を支配している。

 10分。大分のCK。竹村の蹴ったボールをニアの塩川が胸でトラップし、オーバーヘッドキックでゴール前に上げてこようとするが、高橋がヘッドでクリア。ハイキックのファールではないかという抗議をするも、主審はもう一度CKを指示。

 竹村が蹴ったボールは中央へ。マーカーの柴が完全に振り切られ、神野が完全にフリーでヘディングシュート。リカルドが頭でクリアするも、それが吉原の腕に当たって入ってしまう。0ー1。不運な先制点を取られてしまう。

 アルビのキックオフ。まだ時間は十分にある。一度最終ラインでボールを回してから木沢が前線の鳴尾へパス。鳴尾が粘ってサイドでスローインを得る。しかし、投げ入れたボールは大分がサイドにすぐ蹴り出す。よりゴールに近くなったところで鳴尾がロングスローを投げる。大分のDFがヘッドでクリアしたところを式田が胸でワントラップしてボレーシュート。うまくミートせずにこぼれたボールをリカルドがつなぎ、右サイドから鳴尾がシュート。GKがかろうじて触れるものの走り込んできた式田がプッシュ。ゴール。早くも同点においついた。1ー1。

 今日の主審はあまりファールをとらない。またお互い中盤での攻防が激しくシュートまで持っていけないのでなかなか試合が途切れない。時間が進むのがとても早く感じられる。

 大分はあきらかに攻め急ぎ、自滅している。もっと落ち着いて回すべきところも、縦へ急ぎ過ぎてカウンターをうける。アルビの悪いときの典型的な形になっている。

 中盤で秋葉がいい形でボールを奪うものの前線への鳴尾へのパスは長すぎて、ラインを直接割ってしまう。しかしそのスローインを大分の選手はなかなか投げることができない。投げる相手が見つからない。ボールを受ける動きをする選手がいない。ようやく投げたボールは直接アルビの選手のところへ渡る。大分はあきらかに本調子ではない。

 エドウィンがドリブルで突破をはかるが秋葉が簡単にカット。攻め手がない。今日の大分には怖さがない。
アルビもボールは支配するものの、シュートまではなかなか持っていけない。鳴尾へのパスが長すぎてGKに直接取られてしまう場面が目立つ。

 大分の不用意なパスを木沢がダッシュ、こぼれたボールをリカルドがつなぎ瀬戸がミドルシュート。わずかにバーのうえを越える。

 鳴尾が倒され、主審が笛を吹いた直後、式田が判断よく、すぐにリスタート。ボールを受けた水越がDFを2人かわしてシュートをうつもGKがキャッチ。じょじょにフィニッシュまでもちこめるようになってきた。

 ここで前半が終了。お互い1つづつあった決定機を決め、1ー1という見方もできるが、大分は本当にあの1回しかシュートがワクにいってない。

 シュートもあったかどうかも分からないくらい、アルビが押している。ボール支配率も6:4、もしくは7:3でアルビ。このリズムのうちに早めに点が欲しい。逆転勝ちが見たい。

 ハーフタイムにサブの選手がピッチでシュート練習をしている。しかし4人しかいない。まさか、このリズムのいいときに選手交代。よく見るとサウロがいない。まさか鳴尾と交代?中盤を1人下げて2トップ?まだ焦ることないのに。

 違った。サウロはベンチに座っている。しかも手にはキーパーグローブ。しかも眠そう。サウロの行動だけはまったく予想がつかない。

 後半が開始される。選手交代はない。アルビは当然としても大分も交代しないとは。これが大分のゲームプランなのだろうか。

 後半のファーストシュートは大分。塩川のセンタリングのこぼれ球を蹴りこむものの、シュートは吉原の正面。あぶなげなくキャッチ。

 後半もゆっくりボールを回して攻めるアルビ。瀬戸が右サイドから飛び出しセンタリング。リカルドのヘディングシュートはGKがキャッチ。ファーでフリーだった式田が悔しそうに手を広げる。

 ハーフタイムに指示があったのか、前半に比べると幾分落ち着いてきた大分。しかし前線へのパスは簡単にラインを割ってしまう。

 神野のポストプレーのボールを奪った木沢。チェックにきた大分のFWを股抜きでかわす。さすが木沢。

 その後、大分がCKやFKでゴール前にボールを上げてくるがシュートは打たさない。

 大分の選手交代。梅田に代わって川崎が入ってきた。だいぶ後ろでのパス回しは落ち着いてきたものの、中盤から前のパスが不正確で簡単にアルビのボールとなる。

 アルビがゆっくりとパスをまわし、木沢がダイレクトでサイドチェンジ。

 逆サイドの中野がフリーでセンタリングを上げる。ゴール前の鳴尾が懸命にジャンプするが届かない。

 今度は大分が速攻からエドウィンがセンタリング。ゴール前にボールがこぼれるが間一髪でクリア。しかしそボールを拾われ、神野につなぐ。神野がループシュートを狙うが、高さが足りずに吉原が簡単にキャッチ。そしてすぐにサイドにボールを蹴り出す。ゴール前に選手が倒れている。木沢のようだ。だいぶ痛そうだ。タンカで外に運び出される。しかし、治療をうけてピッチに戻る。残り時間は20分。まだ2点目は入らない。

 すこし大分のペースになってきただろうか。神野に振り向きざまにシュートを打たれ、吉原がボールをこぼすもオフサイド。

 逆にピッチを目一杯広くボールを回したあとに瀬戸がロングシュート。今度はワクをとらえるが、GKが弾きCK。リカルドの蹴ったボールを一度はクリアされるが、もう一度リカルドにつなぎ、センタリング。

 ファーの鳴尾が中央へ折り返すが、ゴール前の式田には合わない。しかし、ゴール前に柴、高橋が残り、もう一度センタリング。こぼれ球を柴がシュートするもバーの上を越える。

 残りが10分となったところで大分が選手交代。エドウィンにかえ村田を投入。大分はなんとか90分で勝って勝ち点3を取りたいのだろうが、チャンスをなかなか作れない。

 アルビはまだ交代はなし。流れがいいうえにスタミナの切れている選手も見つからない。

 式田が倒されて得たFKをリカルドが直接狙うもGKの正面。なかなか点がとれない。

 木沢が右サイドを突破、DFと競りながらセンタリング。DFに当たってラインを割ったように見えたが、判定はゴールキック。手を広げ、天を仰ぐ木沢。しかし気持ちは切れない。木沢コールをうけながら、自陣へ走って戻る。

 その後も攻め込みながらシュートまで持っていけない。大分の唯一の攻め手、神野のドリブル突破も秋葉が冷静に抑える。残り時間は5分を切る。

 終盤にきて、水越が目立ってきた。最後まで献身的にボールを追いかける。そして水越が突破してセンタリング。そのボールを鳴尾が中央へ折り返すも大分がクリア。そのまま速攻をしかけられる。しかし塩川がフリーの状態でミスパス。今日の大分は非常にミスパスが多く、みづからリズムを悪くしている。

 ロスタイムに入った。アルビの攻撃。リカルドが左サイドをオーバーラップしてきた中野へパス。中野のセンタリングを大分の選手がクリア。しかしこぼれ球を水越がボレーシュート。惜しくもGKの正面。

 ここで式田にかわってサウロ投入。何かやってくれそうなサウロ。注目のファーストプレーはやっぱりファール。やはりサウロはサウロだ。

 大分が最後の力をふり絞って攻めてくるが守り切り、1ー1で延長戦に入る。

 延長は最初に攻め込んだのはアルビ。右サイドからのFKを一度クリアされるもヘッドでつなぐ。大分の選手のクリアボールはラインを割ったように見えたが、そのままインプレー。しかし大分の速攻をうまくオフサイドにかける。

 そして今度はサウロがドリブル突破。ペナルティエリアの中で倒されるがファールはない。

 今度はサウロがゴール前でスルー。リカルドからパスで突破を狙うがクリアされる。

 そして中盤で水越が粘ったボールをサウロが拾い、そのままミドルシュート。GKの手を弾くがボールは惜しくもネットの上。CKとなる。

 ここでライン上で筒井が交代の準備をしていたが、永井監督は交代を取り消し。リカルドにそのままCKを蹴らせる。

 リカルドの蹴ったボールはニアサイドに走り込んだ選手には合わず、ゴール前に流れる。そしてサウロをマークしていた大分のDFに当たり、そのままゴールへ入る。Vゴール。2ー1で勝利。

 本当に久しぶりの新潟市営での勝利。約2ヵ月ぶりだろうか。木沢をを先頭に選手達が走ってくる。あんなに笑っている木沢を見るのは久しぶりだ。そのままスタンドに駆け寄りキャプテンマークを観客にあげる木沢。みんなうれしそうだ。強豪を倒した達成感、昇格争いに踏みとどまったという安心感、何よりホームで勝てたということが何よりもうれしい。

 そして残り試合は2試合。山形と東京、共に強豪だが、この調子でいけば勝てない相手ではない。奇跡にむかってまだ走り続ける。

【採点と寸評】

GK #20 吉原 6.5
失点の場面はGKとしてはどうしようもない。ハイボールの処理、キャッチング、フィードなどほぼミスなし。ただ、コーチングが少ない。

DF #2 木沢 7.0
あえて攻め上がりをおさえ、守備を重視。オーバーラップしなくともロングキックでサイドをかえ、チャンスを作っていた。また、1対1では抜かれず、ゴール前での競り合いでも負けてなかった。試合終了まで気を抜かずに全力でプレーできていた。

DF #4 柴 6.5
失点の場面、完全に神野にマークを振り切られて点を取られたが、その後は完全に神野を抑えた。非常に集中してシュートまでもっていかせないディフェンスをしていた。ただ縦へのフィードが雑で直接ラインを割ってしまう場面があった。

DF #14 高橋 6.5
最後までよく集中してディフェンスしていたが、フィードがまだ不正確。フリーで中盤までボールを持っていけただけにもったいない。それ以外はミスはなくほぼ完璧。

DF #12 中野 6.0
攻め上がりは少なかったものの、ゴール前に走り込むなどバリエーションが増えていた。センタリングもじょじょに精度が上がってきている。ディフェンスでは落ち着いて1対1の場面を処理し、 あわてることがなくなった。

MF #22 秋葉 7.0
ときには最終ラインに入ってビルドアップをしていたが、基本的には中盤で献身的に走り回り、出足の早いチェックで相手からボールを奪っていた。特にエドウィンをほぼ完全におさえたことを評価したい。

MF #7 瀬戸 6.5
精力的に中盤でチェックしつづけ、チャンスとみれば惜しいロングシュートを打っていた。以前に比べ、シュートの精度が高くなった。

MF #24 式田 7.0
前線からディフェンスまで絶え間なく走り続け、チャンスを作る。ゴールの場面も判断良く詰めていたし、素早いFKからチャンスも作っていた。雑だったパスもすこしづつ改善されてきている。

MF #6 水越 6.0
あまりボールにからめなかったが、ドリブルに入ると大きなチャンスを作っていた。また前線にも何回も飛び出していたのだが、いいパスがこなかった。

MF #9 リカルド 6.0
ほぼトップ下のポジションだったが、FWが鳴尾一人だったため、スルーパスは出せず。その分、CKでは精度の高いボールを蹴っていた。

FW #11 鳴尾 6.5
最後まで相手ディフェンダーにプレッシャーを与え続けた。同点ゴールは得点者こそ式田だったものの、鳴尾のシュートでほぼ決まっていた。ポストプレーが多かった分、シュート数こそ少ないが、チームのディフェンスに大きく貢献。

FW #10 サウロ 6.5
出場時間が短かったうえに、プレー回数も少なかったが、決勝点を呼び込むCKのきっかけとなったロングシュートは見事。

監督 永井 7.0
守備を重視の戦術を完全に選手に浸透させ、見事に実行。流れをきらない采配で押し込むことはなかったものの、相手にほとんど攻め込ませなかった。最後のCKの場面もライン際までいた筒井を下げ、リカルドに蹴らせるなどあらゆる采配がはまっていた。