2000年2月29日
新シーズンの開幕まで10日を切った。J2リーグ戦を4位で終えた去年を振り返りながら、今年のアルビレックス新潟の展望を探ってみたいと思う。
まずは監督をはじめとしたスタッフ陣と選手についてである。永井監督は留任、今年でアルビレックスの指揮をとるのは3年目となる。一昨年は3バック、去年は4バックと違いはあるが、ともに守備を固めてカウンターという戦術にかわりはない。記者会見で「今年は攻撃的にいく。」と公言しているが、今年も守備ありきの戦術をとることになるだろう。
スタッフ陣は永井監督、三日月マネージャー以外は新しい顔ぶれが並ぶ。アシスタントコーチには一昨年までアルビレックスで選手として活躍していた平岡宏章、フィジコにはアウタイル、GKコーチにジェルソン、ドクターに大森徹、マッサーは小林巧となっている。
選手は去年の開幕時と同じく22人で開幕を迎えることになりそうだ。練習試合の様子などから昨年と同じく、4ー4ー2のフォーメーションをとることが予想される。そこでポジションごとにスタメンを予想してみる。
GKは木寺、吉原と新加入の野沢がスタメンを争う。基本的には昨年、25試合に出場し、背番号1をつける吉原が一歩リードしているが、木寺も能力的には吉原と遜色はない。野沢は若さがネックととられがちだが、吉原と年齢は1つしか違わず、まだ3番手GKと決めつけることはできない。
DFでもっとも激戦区なのはCBであろう。昨年活躍したセルジオ、柴、高橋の3人に、元日本代表の神田が加わった。しかし早くもセルジオ、柴が故障しており、神田も年齢的にシーズンを通してのプレーは難しいだろう。実力は横一線だが、ケガの少ない高橋を軸にしていくことが予想される。
左SBには去年レギュラーだった中野と新加入の神田がポジションを争う。中野はオフに手術をうけ、昨年悩まされたケガを完治、昨年以上の活躍が期待できそうだ。神田はCBと左SBの兼ね合いでポジションは流動的になる可能性が高い。
右SBは主将でもある木沢で間違いないだろう。木沢の控えには新加入の井上が入る。警告累積やケガで欠場の多い木沢の穴を井上がどれだけ埋めることができるかが今年の重要なテーマのひとつである。
ボランチは昨年同様、2枚でいくようだ。昨年のレギュラーであった秋葉は当確であろう。問題は秋葉とコンビを組む選手である。昨年まで秋葉とコンビを組んでいた瀬戸は長短のパスで散らす選手だったのでタイプ的には寺川が挙げられる。昨年市原を降格争いにいたらしめた戦犯とされている寺川だが、J2では昨年J2得点王となった神野など、J1で活躍できなくてもJ2で活躍した選手はたくさんいる。J1での実績はJ2ではあまりあてにならない。そして小林と瀬戸の背番号7を引き継いだ新加入の堂森が寺川とポジションを争う形になりそうだ。
攻撃的MFは昨年とはまったく違うメンバーが並ぶ。昨年までのレギュラーだったリカルド、水越が解雇され、今年はあらためて横一線のスタートとなる。背番号10をつけるマルコ、昨年途中加入ながらレギュラーに食い込んだ式田のスタメンが濃厚か。そこに若手の長谷川や本間がポジションを争う。寺川、小林およびFW登録のナシメントがこのポジションに起用されることも十分考えられる。
FWも非常に激戦のポジションである。清水から移籍した服部、昨年のチーム得点王の鳴尾と鈴木、そらに新加入のナシメントがスタメンを争う。誰がスタメンになるか予想もつかないが、守備を重視するチームだけにチェイシングを得意とする服部と鳴尾が一歩リードか。
次はフロントについてである。一昨年に引き続き、去年のオフにも大量解雇を行ったフロントだが、長期的視野にたったチーム運営とはいいがたい。たしかにある程度の節度をもった解雇は選手に危機感を与え、チーム力の底上げをすることができる。しかし闇雲な大量解雇ははえぬきの選手を減らし、同時にファンの心も大きく傷つける。結果を残せない選手の解雇はやむをえないが昨年だけでも疑問符のつく解雇選手が数名いる。特に昨年警告累積の1試合の欠場以外にすべて出場した水越を解雇にする理由が見当たらない。過去に一部フロントの傲慢で選手が解雇にさせられたという噂を訊いたことがあるが、水越の解雇もそうなのだろうか。このようなことはこれで最後にしてもらいたい。
昨年の解雇および補強は誰の目にもあきらかな狙いをもっていた。結果をだした守備陣は残し、点のとれなかった攻撃陣を解雇し、入れ替える。だが、あまりにも極端すぎる。コンビネーションを磨く時間を考えると大きなギャンブルのように感じられる。フロントは去年と同じようにうまくいくだろうと楽観しているように感じられるのは僕だけだろうか。
昨年新加入した選手の6人が解雇となっている。この責任は誰がとったのだろうか。責任を明確にしない限り、この悪循環はなくならない。
次は観客についてである。昨年J2が始まり、新潟で初めて本格的なプロスポーツが開催された。初めてのことなのだから、色々と戸惑うこともあったに違いない。だが今年を2年目である。昨年の二の舞いになってはいけない。
ここからはかなり主観的な意見なので反論も多いと思う。サッカーに限らず、プロスポーツとはお金を払って選手からプレーを見せてもらうだけのものではない。そのプレーに対し、観客はリアクションを起こすべきだ。素晴らしいプレーには拍手を、不甲斐ないプレーにはヤジや罵声を。それによって選手は要求されているものを知ることができる。
新潟市陸に足を運ぶ観客の多くはアルビレックスが勝つ姿を見たいと思って来ているはずだ。観客にできることはただ勝利を祈ることだけではない。大きな声で選手を励まし、手を叩き選手の闘志を鼓舞することもできる。観客も間接的に試合に参加できるのだ。
反対にヤジや罵声も言うことできる。なぜならお金を払って見に来ているのだ。言う権利は持っている。
つまり、今年アルビレックスの試合を見に行く人達に言いたいのはもっと意志表示をしてもらいたいということである。
声をそろえてサポーターソングを唄わなくとも、振りをそろえなくともいい。ただ素晴らしいプレーには惜しみない拍手を、情けないプレーには惜しみないヤジを、選手達にぶつけてほしい。それによって選手達はより大きなやり甲斐を感じてくれるに違いない。
最後に僕がアルビレックスに望むことを書きたいと思う。それは消滅しないことである。知ってのとおり、アルビレックス新潟は2002年ワールドカップ招致のために作られたサッカークラブである。つまりワールドカップの新潟開催が決まった時点で役割の半分を果たし、2002年までにサッカーファンを増やし、新潟でのワールドカップを無事終えた時点で役割を完全に果たすこととなる。そうするとアルビレックス新潟の存在意義はなくなる。消滅してもおかしくはない。
消滅しないためにはアルビレックスを新潟に欠かせないものにする必要がある。そのためには観客を平均7、8000人以上集めることやJ1昇格などが必要となってくる。そしてそのために必要なのはアルビレックスの勝利である。勝つために少しでも手助けがしたい。拍手をし、大声をあげ、選手を手助けをするために僕は今年も全国を駆け巡るだろう。そしてまたとても長くてとても短いシーズンが始まる。