2005シーズンが完全に終了し、選手もオフ。来期に向けての契約交渉も続々と進んでいるようで、年の瀬と共にいよいよクロージングである。17日に「雪男」反町監督のお別れ会が行われたが、それを待っていたかのように大寒波襲来(笑)。積雪こそたいしたことなかったものの、新潟市内も凍り付き、街中がプチパニックになった。先週の気候を考えれば天皇杯敗退という結果も懸命な選択だったかもしれない。
さて、既に各メディアがこぞって、この1年の総括をしているが、今日は負けじと僕も総括してみたい。総「喝!」とベタなタイトルをつけなかったのは私の良心、いやプレースタイルである。
そんなくだらない前説はさておき、まずは開幕前まで遡ろう。昨シーズンまでの新潟は左サイドに比べて右が弱いとされていた。攻撃がファビーニョ、鈴木慎吾らを擁する左サイドに偏りがちで、ここを押さえられるととたんに苦戦を強いられた。ここで、名古屋から獲得してきたのが、右サイドのスペシャリスト海本幸治郎である。幸治郎の能力は前年の対戦で思い知らされていた。強力な突破力を持つ両翼の誕生。これに加えて、新潟史上初の「セレソン」SBアンデルソン・リマの獲得まで伝えられる。幸治郎とリマの共存。果たしてどのような組み合わせで使うのか。ブラジルキャンプ中、まだ見ぬ新チームに思いを巡らせ、至る所で愉しい議論は交わされた。新潟サポーターの開幕に寄せる期待は過去最大値であったのは言うまでもない。
そんな開幕戦だが、0-4の完敗でいきなり夢を打ち砕かれる。幸治郎は退場。リマは途中出場。かみ合うどころか最初から分裂。欧州トップモードの4-3-3は空しく空回りをし、全く見せ場なく4失点。加えて、試合途中からは冷たい雨にも晒されるなど、選手、サポーターにとっても散々な開幕だった。結局、今シーズンの目玉、幸治郎とリマの幸せな共存は一度も実現することなくシーズンを終えることになる。
スタートダッシュに失敗するのはデフォルトになっているとはいえ、2年目の今シーズン序盤はアウェイゲームを中心に苦しい戦いが続いた。特に、広島での0-5の大敗はショッキングだった。J2時代からの好敵手で、相性も決して悪くない。それが、序盤からゲームを支配されただけでなく、時間を追うごとに崩壊。どんなゲームでも、かならず「修正」して少なからず意地を見せてくれたチームが、なすすべなく敗れ去った。この時点で既に3試合目の大敗。何かが違う。J1の壁、2年目のジンクスで片づけるにはあまりにも大きな衝撃だった。
しかし、よく言われているように、新潟がその後持ち直し、また結果的に残留を決めた要因はホームゲームでの無類の強さである。基本的にホームとアウェイを交互に繰り返すレギュレーション上、連敗がなかったのが大きかった。終了間際に2発叩き込んで逆転した大宮戦。間違いなく永遠に刻まれることになるであろう川崎戦におけるリマのFK。桑原のスーパーシュートをはじめとする計4発を叩き込み、今シーズンのチャンピオンをねじ伏せたガンバ大阪戦。今年度のサポーターズCDのタイトルにもなった「グラマラス」な空間がホームゲームで創出されていた。気がつくと順位もジャンプアップ。このままホップ、ステップ、ジャンプと順調にJ1ロードを歩んでいくのか、と思った時期もあったが、甘かった。慢心と言っても過言ではない(お前がなぁ)。
今、これを書くにあたって、今シーズンの試合結果の一覧表を眺めているが、いつが転機になったのかは本当のところ分からない。個人的には、カシマスタジアムでの2-7の大敗後、毎試合立て直してきたホームで、すんでの所で勝ち点3をこぼした千葉戦あたりから歯車が狂ってきたように思えるが、兎にも角にも、ホームでも連敗をし、結果的に4連敗を刻んだあたりで完全におかしくなった。一部のチームをのぞき、J1のチーム力の差というのはむしろJ2より少ないというのが、J1で戦ってみて初めて気づいたところ。ちょうど、僕自身がコーチ研修を受けていた時期と重なり、少しは監督の苦悩が分かったような気も、そして、いったん流れが悪くなると歯止めがきかなくなるリーグ戦の怖さというのを、その面白さとともにしみじみと実感できたときである。
4連敗後のミニキャンプで、かなり立て直し、結果的に残留にこぎ着けたわけだが、数字上(12位)よりもパッとした印象が残っていないのは、今年は、ここぞ、というゲームでことごとく負け、もしくは引き分けたということが大きいのであろう。東京V、神戸、柏とすべて引き分け。かと思うと、アウェイの磐田や名古屋でスッキリ快勝(苦笑)。ブラジル人トリオ3人に攻撃をまかせ、守備をがっちりと固めるというリアリズムを追求し始めたあたりから、当然サッカーも、選手起用もつまらなくなり、僕なども、失礼にも拙稿で批判もどきをしたことがあったが、こんなことはこの5年間でははじめての出来事。本当に苦しんだ後半戦だった。
思えば、二つ前のコラムで、良くも悪くも(反町新潟時代の)終焉に相応しい、というようなことを書いた気がするが、終わりなんてそんなものである。むしろ、ここで僕は唐突に4連敗した後の反町監督の記者会見を思い出した。
「4連敗しますと、皆さんは色々と面白おかしく書かれるとおもいますけれど、シーズンが終わるまで責任を持ってやるのが監督の仕事ですので、逃げ出さずしっかりやってやっていきたい、と思っています。(MSNスポーツ)」
本当に勝手な推測に過ぎないが、反町監督はこの時点ですでに今シーズン限りでの辞任の意志を固めていたのかもしれない。そして、理想を捨て、自分に課せられた最低限のミッション、すなわち「J1残留」だけを心を鬼にして勝ち取る。周囲の雑音に、思い切り反論したいときもあっただろうが、ここはプロ。見事に黙って、男前に結果を残した。理想のサッカーは、おとぎ話第2章で展開される予定だからして、僕もそのときを本当に心待ちにしている。
「(苦しみながらJ1残留が出来た)この年がキーになったね」、将来的にそういう会話がかわされるようになったとき初めて2005年は浮かばれる。いや、それどころか評価される1年になろう。総括を書くと言いながらグダグダになったが、2005年の評価はこんな感じで後年に譲りたい。
ここで一つ宣伝。毎年、行われているのだが、サポーター主催によるAlbirex Awards2005が今年も開催される。これは、JリーグAwardsと無縁だったJ2時代からやっているイベントで、ある意味これがなければシーズンは終われないというようなサポーターの祭典。オフィシャルでは不可能なサポーターならではの投票項目も多数用意されているので、是非参加してください。
そして、もう一つ最後におまけ。
僕の友人で、反町監督とちょっと親交のあった方(飲食業)から聞いたエピソードです。いい話だと思いますので、彼から教えてもらった話を紹介します。
飲みに来てもサッカー大好きな彼は、スカパー!を見ながら解説を始めてしまう。
「ほら!今の巻き戻して!」なんつって。 スカパー!だっつーの。
「ほら、今ココでカリュウがプレスに行くんだよ。右切ったんだけど、この(画面の)写ってないところに….ホラ、バラハのチェックが入ってる。次ボール取れるよ…..よし、ここで左フィードぉ…..ハイよーし、ビセンテは足下に置いてから勝負するから….ほら」なんて、解説が止まらなくなる。
わざとサッカーの話をしないようにしている俺たちの心配をよそに、ピタピタ当たりまくる(一度見たんじゃないかと思える程の)数秒先の予想を語りまくる彼。
W杯を本当に楽しみにしているように、本当にサッカーが、好きなんだと思います。
彼は、次のリーグ戦の分析で疲れた頭を癒すため、サッカーを見てるんじゃないかと思いました。
2005年12月19日 浅妻 信
PROFILE of 浅妻 信
あさつま まこと 1968年生まれ。新潟市出身。新潟高校卒業後、関西で長い学生時代を過ごす。アルビレックスとの出会いは99年のJ2リーグ開幕戦から。以来、サッカーの魅力にとりつかれ、現在に至る。2002年、サポーターのみでゼロから作り上げたサポーターズCD「FEEEVER!!」をプロデュースして話題に。現在もラジオのコメンテーターだけでなく、自ら代表を務める新潟県社会人リーグ所属ASジャミネイロの現役選手としてフィールドに立つなど多方面で活躍中