2000.05.18 第13節 MatchReport 新潟×鳥栖

2000年5月18日(木)19:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 サガン鳥栖 △ 0-0

 
 久しぶりのナイトゲーム。平日だけにいつも以上に観客の入りは少ない。ライトアップされたピッチへ両チームの選手が入場してくる。結果の出ないチームに永井監督はスタメンを大幅に入れ替える決断をする。神田をFWに上げ、秋葉、式田の負傷で空いたボランチには井上を抜擢、鳴尾、シンゴ、柴をベンチに置き、セルジオ、マルコ、ナシメントのブラジルトリオがスタメンである。

 神田をトップに上げたのは得点力の無さをカバーするための苦肉の策か、それとも高さとキープ力を活かして前線で攻撃の起点となることを期待しての起用だろうか。いずれにしろ、これで神田は今シーズン、GK以外のすべてのポジションで起用されたことになる。メンバーを固定できない現状を象徴するような起用法である。

 鳥栖のキックオフで試合が始まる。1度、中盤に下げて大きく前線に蹴り出したボールをFWが競り合い、こぼれ球をペナルティエリアの外からボレーでシュートを放つが大きくワクをそれる。

 アルビのゴールキック。吉原がボールを置き、助走をつけるために数歩後ろに下がる。セルジオが大きく両手を広げ、もっと全体的に上がるように味方に指示を送る。吉原の蹴ったボールを神田が鳥栖の選手と競り合う。こぼれ球にいち早く反応したのはアルビの選手。DFラインを押し上げ、中盤をコンパクトにしたおかげでボールとの距離が近くなり、こぼれ球を拾いやすい。さらに選手間の距離が縮まり、パスコースが増え、中盤でボールを回しやすくなっている。

 鳥栖の選手が懸命にプレッシャーをかけに来るが、少ないタッチでパスを回しているので、奪われることが少ない。奪われてもすぐにプレッシャーをかけられるので、DFラインがずるずると後退してしまうこともない。常に高いラインを保ち、攻撃的に試合を進めていく。これが監督のいう攻撃的なサッカーということなのだろうか。

 寺川から効果的なサイドチェンジが行われ、それによって木沢、中野の攻撃参加が引き出される。サイドバックの攻撃参加は攻撃の厚みを増し、サイドで数的優位を作り出す。上がった後には井上がカバーに入り、カウンターを受けることも少ない。

 だが、致命的なことにシュートまでもっていけない。サイドから崩してセンタリングを上げるが、DFにクリアされ、シュートまでもっていけない場面が多い。ミドルシュートを打つ選手がいないので、鳥栖のDFがゴール前に張り付き、中央で合わせにくい状態が続く。

 前線でナシメントがキープして起点になっているが、神田はほとんどボールにからむことができない。競り合いに参加する場面は多いが、足元でボールをもらえていない。

 オーバーラップを重ねるごとに木沢の調子が上がっていくように見える。パスの勢いを利用しての50M級のサイドチェンジ、トリッキーなドリブル、サイドを駆け上がったかと思うと、中央に走り込み、みずからシュートも狙う。

 最初のチャンスはその木沢から生まれた。中盤で本間がボールをキープ。木沢が右サイドから猛烈なスピードでオーバーラップを仕掛け、そこへ本間がスルーパスを出す。この時点で完全にDFを置き去りにし、ペナルティエリア近くまでドリブル。グラウンダーで中央に折り返すと、そこへ本間が走り込み、シュート。惜しくもDFに当たり、CKとなるが、完全に鳥栖DFを崩したプレーだった。

 寺川のポジションでサイドチェンジができるので、最終ラインまで戻す場面が少ない。下げてもすぐに井上、寺川がボールを受けに来ているので、すぐに中盤へボールが戻る。今までは最終ラインでパスの出しどころが無く、ただボールを回していることが多かっただけに、今日は攻撃のリズムが切れない。

 中盤の本間、寺川、井上が目立つ一方、マルコがなかなかボールにからめない。だが一旦ボールを持つと、素晴らしいプレーをすることもある。中盤で完全に鳥栖DFの裏をかき、抜ければ独走になっていたナシメントへのスルーパスは惜しくもオフサイドになってしまったが、圧巻だったのはその後である。中盤でボールをカットするとそのままドリブルでDFを1人、2人とかわしてペナルティエリアに侵入、右足でのシュートはDFにブロックされたが、観客の大きな拍手がインパクトの大きさを物語っていた。

 6、7割ボールキープしていながらなかなかゴールが奪えない。前半ロスタイムにセンターラインを少し越えたあたりでアルビがファールを犯し、鳥栖のFKとなる。ゴール前に選手を集める鳥栖。鳥栖の選手がファーサイドを狙って蹴ったボールに吉原が飛び出すかどうか一瞬迷う。

 ファーサイドで鳥栖の選手が頭で合わせ、山なりのボールが飛び出せなかったことでポジショニングが中途半端になっている吉原の頭上を抜ける。悲鳴がスタジアムに響く。ボールはギリギリポスト右へ抜け、ドリンクボトルを直撃する。悲鳴は安堵のため息に変わった。

 1分のロスタイムの後、前半が終わる。圧倒的に攻め込みながら得点を奪えなかった悔しさと失点しなかったことへの安堵の感情が混じり、複雑な気持ちでハーフタイムを過ごす。神田のFW起用は失敗のようだが、ブラジルトリオの抜擢はチームに大きな変化をもたらせた。セルジオは常に声を出して、他の選手を勇気づけ、高いラインを保たせている。ナシメントは前線でキープし起点になっているし、マルコの意外性のあるプレーは攻撃のアクセントになっている。

 アルビのキックオフで後半が始まる。ハーフタイムで修正してきたのか、かなり鳥栖がキープできるようになってきている。
 開始早々、DFラインの裏へ出たボールに鳥栖の選手が走り込む。完全に1対1の場面になるが、トラップをミスし手に当たったことでハンドになり、ピンチを脱する。

 少ないタッチでボールを回す鳥栖にアルビの選手はプレスの焦点が合わせられないでいる。中盤でプレッシャーがかけられなくては最終ラインは押し上げられない。次々とクロスが放り込まれるが、ここでもセルジオが高さを活かし、ことごとくはねかえす。

 後半は前半のようなボール回しができなくなっている。ラインが低く、中盤がルーズな状態でサポートが遅れてしまう。さらにサイドチェンジが少なくなり、攻めが単調になってくる。

 じょじょに鳥栖が攻め込む時間帯が増えてくる。サイドから速いボールがゴール前に入り、鳥栖の選手がシュート。吉原がファインセーブで止めたが、こぼれたボールを狙った鳥栖の選手のスライディングタックルが吉原に接触。倒れ込む吉原。ボールをサイドにクリアされたが、両チームの選手が集まってもみ合いになり、スタジアムは騒然となる。

 膠着状態に入りかけた頃、永井監督が動いた。マルコ、井上に代え、シンゴ、鳴尾の投入。シンゴはマルコのポジションへ、神田がボランチに戻り、鳴尾が前線に入る。
 この交代でアルビが流れをつかむ。鳴尾が入ったことで前線でキープできる起点が増え、シンゴのドリブル突破は鳥栖DFの混乱を誘う。

 アルビがペナルティエリアの外でファールを犯し、鳥栖のFK。キッカーの選手はロベルト・カルロスのように足踏みしながら助走をつけ、右足を振り抜く。強烈なシュートが吉原の頭上を抜けるが、ボールはわずかにバーを越える。

 シンゴの投入で左サイドからの攻めが強化された分、右サイドにスペースが出来はじめる。そこへ木沢がオーバーラップし、再びサイドからの攻撃が活性化する。神田、寺川が左右に散らし、中央へ折り返したボールに鳴尾、ナシメントが詰める。逆サイドへ流れたボールもきっちり拾って、また中央へ折り返す。だが、シュートまでもっていけない。
 さらに神田からのクロスボールに鳴尾がヘッドで競り合う、こぼれたボールを鳴尾が追いかけ、シュート。ここは惜しくも鳥栖のGKがセーブ。今度は中盤から鳴尾がミドルシュートを放つ。GKがファンブルするが詰められない。

 後半の30分、ナシメントに代え、服部の投入。これで3人の交代枠を使い切った。これまでとは違い、すぐにDFにチェックにいく服部。コーナー付近でボールキープしていたDFにスライディングタックル。こぼれ球を鳴尾が拾ってそのままドリブルするが、DFに阻まれ、サイドに蹴り出される。

 鳥栖が左サイドからドリブルで切り込む。ライン際から中央へグラウンダーのセンタリングが入る。速いボールが選手が密集していたニアサイドを抜け、ファーサイドへ流れる。完全にフリーになっていた鳥栖の選手がシュートするが、吉原が超ファインセーブでブロックし、ピンチを逃れる。

 後半のロスタイム。左サイドのシンゴからアーリークロスが入る。マークしていたDFを振り切って、ファーサイドでフリーになっていた服部がヘディングシュート。ボールはGKを越えるが、バーを越え、ゴールマウスの上のネットに載った。頭を抱える服部。
 ここで主審のホイッスルがなり、延長戦に入る。すでに交代枠を使い切っているため、もう交代はできないがセルジオの疲労が激しい。

 鳥栖のキックオフで延長戦が始まる。最初のチャンスはアルビ。木沢のオーバーラップからのセンタリングが左サイドに流れ、走り込んだシンゴがシュート。しかしボールは大きくワクを外れる。

 今度は中盤でボールを奪った神田が意表をついたミドルシュート。完全にスキを突かれたGKは飛ぶこともできないが、ボールはわずかにポストの右側を抜ける。

 鳥栖も右サイドを突破してセンタリング。またもやボールがニアサイドを抜け、ファーサイドでフリーになっている選手の足元へ流れる。しかし木沢が間一髪で戻り、クリア。なんとかピンチをしのぐ。

 後半に入ってすぐ木沢からクロスを服部が競り合ってこぼれ球を寺川がボレーシュート。しかしワクを大きくそれてしまう。
 木沢が何回も右サイドを往復してるため、足がつってしまう。それでも走って戻ろうとする姿が痛々しい。

 ロスタイム、アルビがCKを得る。一旦クリアされるが、再度CK。左サイドから本間が蹴ったボールにニアで服部がファーサイドに流す。ファーサイドで完全にフリーになっていた高橋がヘディングシュート。わずかにバーの上を越える。頭を抱え、その場に倒れ込む高橋。

 そして試合終了。0ー0のドロー。今シーズン初の無失点試合であり、またもや無得点だった試合でもある。
 ゴール裏には1番前まで降りてきて選手名をコールするサポーターの姿があった。メインスタンドからは頭を下げる選手達に大きな拍手を送られた。ゴールは奪えなかったが、この試合を見て今後の試合に少し光りが感じられたような気がしたのは僕だけだろうか?

 
【スターティングフォーメーション】
セルジオを中心に最終ラインを積極的に押し上げ、中盤をコンパクトにすることができ、こぼれ球を多く拾うことができた。寺川を起点に展開し、左右のサイドから攻撃が多かったが、サイドに偏り過ぎて中央からの攻めが少なかった。

【採点と寸評】

GK #1 吉原 6.5
ファインセーブを連発し、ゴールを死守。だが飛び出しを躊躇する場面が何回か見られた。

DF #2 木沢 7.0
正確なロングキックで逆サイドまで展開、さらにオーバーラップからのセンタリングでチャンスを作った。

DF #3 セルジオ 6.5
1対1でかわされることもあったが、積極的にラインを押し上げていた。空中戦の強さはあいかわらず。

DF #14 高橋 7.0
終了間際のヘディングのシュートミス以外はほぼ完璧。

DF #12 中野 6.0
タイミング良く上がってくるがセンタリング時のボールスピードが遅い。

MF #19 井上 6.0
運動量が少なく、あまりつなぎに参加できなかったが、速攻を受けた際に戻るスピードが速い。

MF #7 寺川 7.0
完全に攻撃の起点になっていた。大きな展開は攻撃の絶好のアクセントとなっていた。中盤では体を張った守備を望みたい。

MF #10 マルコ 5.5
運動量が少なく、ボールにからめず。ときおりドリブルやパスで魅せるが、消えている時間が長い。

MF #15 本間 6.0
献身的に中盤でボールを追い、カットできていた。パスを出すスピードが遅い。

FW #8 ナシメント 5.5
前線でキープしてチャンスを作るが、シュートを打てず。

FW #5 神田 6.0
FWのポジションではあまりボールにからめなかったが、ボランチに入ってからはロングキックを中心に攻めに参加していた。

FW #11 鳴尾 5.5
積極的にシュートを打ったが、空中戦の弱さが目立った。

MF #17 鈴木 6.0
ドリブル突破でチャンスを作る。シュートの意識が希薄。

FW #9 服部 5.5
以前に比べて前線での守備の回数も増え、シュート数も増えたが、シュートの正確性に欠ける。

監督 永井 6.5
スタメン大幅に入れ替えたことがチームに活力を与え、早めの交代で攻撃の意識を高めた。

 
【記録】

2000年5月18日(木)19:01キックオフ
於 新潟市陸上競技場
【主審】柿花 和夫【副審】伊藤 力喜雄/岡野 尚士
アルビレックス新潟 対 サガン鳥栖

アルビレックス新潟
0-0
サガン鳥栖
0-0
0-0
0-0

0 GK 1 吉原 慎也
1 DF 2 木澤 正徳
0 DF 3 セルジオ
1 DF 14 高橋 直樹
0 DF 12 中野 圭一郎
0 MF 19 井上 公平
6 ( 63’~ 11 鳴尾 直軌 )
4 MF 13 寺川 能人
1 MF 15 本間 勲
1 MF 10 マルコ
3 ( 63’~ 17 鈴木 慎吾 )
0 FW 8 ナシメント
3 ( 75’~ 9 服部 浩紀 )
2 FW 5 神田 勝夫
 
監督 永井 良和

GK 1 高嵜 理貴 0
DF 5 松田 考功 0
DF 4 川前 力也 1
DF 12 佐藤 陽彦 0
MF 17 森保 洋 1
MF 22 関本 恒一 1
MF 25 古川 隆志 1
( 77’~ 8 北内 耕成 ) 1
MF 15 高木 健旨 0
MF 11 古賀 正人 2
FW 9 片渕 浩一郎 1
( 45’~ 18 福留 亮 ) 4
FW 7 佐藤 大実 1
( 95’~ 3 朴 永浩 ) 0
 
監督 高祖 和弘
 

得点者
 
警告
55′ 井上 公平
60′ 中野 圭一郎
45′ 佐藤 大実
 
退場
 
10 GK 19
14 CK 7
26 FK 23
0 PK 0