早いものでリーグ戦も残り1試合、鈴木監督が目標としていた7位以内は不可能となったが、もうひとつの目標、世代交代はどうだろうか。
豊富な運動量にスペースへの動き出し、亜土夢(田中)はすでにチームに欠かせない選手のひとりになり、貴章(矢野)も終盤になってやっとチームにフィットしてゴールを挙げられるようになった。北野は至近距離からのシュートに対しても素早い反応でいくつもの決定機を防いで野澤からポジションを奪い、アジアユースの活躍で自信を付けた河原も徐々に出場時間を増やしつつある。
そして何よりサプライズだったのは千葉、中野という2人のセンターバックだった。
今シーズンの新加入の選手のなかで最もスタメンから遠いと見られていた中野洋司は開幕戦からポジションを勝ち取ると、シーズンを通してケガや出場停止以外ではほとんどスタメンを確保している。中野の持ち味は174cmの身長を感じさせない身体能力の高さだ。空中戦に対してもなかなか競り負けないうえ、スピードはまさにトップクラス。幅広いカバーリングで何度もチームをピンチから救った。
千葉和彦は昨シーズンの途中にオランダのドートレヒトより加入するも中盤の熾烈なポジション争いのなかで本職のボランチとしての出場機会をなかなか得られないでいた。今シーズン当初、背番号が永田が6で千葉が3というのは逆の方がいいんじゃないかと思っていたが、サテライトでセンターバックとして出場機会を重ね、決定機になったのがサテライトでのFC東京戦。同じくオランダ帰りで同年代の平山相太とのマッチアップが鈴木監督の目にとまり、トップチームのFC東京戦にスタメン抜擢。東京戦での活躍を買われ、センターバックのポジションを確保する。反町監督率いる五輪代表チームにも選抜、出場を果たし、急成長を遂げた選手のひとりだ。
実は千葉がセンターバックに入ったときは中野が左サイドバックに回ることが多かったのだが、海本慶治の負傷によりジェフ戦で千葉と中野がセンターバックを組むこととなった。経験の少ないふたりにナビスコ優勝を果たした苦手のジェフの攻撃陣が止められるのだろうかとの心配の声もあったが、終わってみれば3対1の勝利。PKによる1失点が悔やまれるが、巻をはじめとした日本代表の面々を相手に堂々と渡り合ってみせた。
この試合で注目すべきは最終ラインの高さだ。今まで新潟は積極的にDFラインを押し上げることはなかった。理由は2つ、ひとつは相手を引き出し、相手陣内にスペースを作る方が新潟得意の縦に速いサッカーが活きること。
もうひとつは残念ながら今までセンターバックに足の速い選手が少なかったことだ。当然ながらセンターバックが相手に走り負けてしまっては簡単にゴールを奪われてしまう。その状況を作らせないために、GKとセンターバックの間にあえてスペースを作るような最終ラインの押し上げを行わなかった。しかし、中野も千葉もスピードには自信がある。今までにはありえないくらいの最終ラインの押し上げで中盤をコンパクトに保つ。これが前線からの守備を重視する鈴木監督のサッカーにはまった。ジェフ戦ではDFはもちろんGKにまでプレスにいく場面が何度もあった。たとえDFの裏へ蹴りだされても2人のスピードなら充分カバーできた。
しかしこの2人のセンターバックには大きな弱点がある。クロスへの対応が極端に悪いのだ。もちろんそれは個々の対応の悪さもあるのだが、周囲への指示による組織的な守備作りができていない。ここが海本慶治との差になってくる。今後経験を積んで着実に埋めていかなくてはいけない。
今後、チームとしてもっとも重要なのが失点をいかに少なくするかという部分だ。そのためにセンターバックというポジションがとても重要となる。千葉、中野以外にもベテランの海本慶治、怪我明けの永田、喜多といった選手達、彼らをどう組み合わせていけばもっとも効果的な守備ができるのか。チームの躍進には彼らの活躍が必須だ。そして期待を込めて鈴木サッカーのキーマンとして千葉、中野の名前を挙げたい。
世代交代からクラブのステップアップへ。
リーグ最終戦、そして天皇杯は来シーズンにつながる試合を期待したい。
2006年11月28日 13時11分 岡田 正樹
PROFILE of 岡田 正樹
おかだ まさき 1978年生まれ。新潟出身。アルビレックス初観戦は99年のJ2開幕戦から。以来、ほとんどの週末をスタジアムで過ごす生活を送る。6歳からサッカーをはじめ、現在は新潟県リーグASジャミネイロでプレー。好きなサッカーの楽しみ方はやること、見ること、書くこと、読むこと、考えること。