【コラム】2010年 J1全チーム戦力分析 最終回

2010年 J1全チーム戦力分析 vol.7
さあ、開幕を明日に控え、いよいよ最終回です。
最終回はそう、我らがアルビレックス新潟です。

 
 
えー、INとOUTは書くまでもないですよね?開幕を前に、今年の戦力について改めて考えてみたいと思います。まず去年のスタメンで言うと、北野、ジウトン、千代、松下が抜けたと。
 
その結果、まず北野→黒河になった訳ですが、PSMではっきりと見えたのは、GKのキックが今年は武器になるということでしょう。黒河のキックの優れた所は、明確なメッセージを持って意図的なキックを蹴れるということ。特に新潟のような速攻がストロングポイントのチームには非常に大きな武器になるはずです。
肝心の守備面は現時点ではまだ分かりませんが(PSMの1失点目はスーパーなGKであればあそこに弾く事はないと思いますけどね)、このキックが武器になるのだけは、間違いないと思います。
 
 
続いてジウトン、松尾、そして千代が抜けたDF。これが今年の最大の焦点になるのは間違いないでしょう。まずサイドバック。去年は左にジウトン、ヒロシ。右に内田、左右にゴートクと松尾と言う、ちょっとしたサイドバック天国だったわけですが、ジウトンと松尾が抜けたことで、専任のサイドバックが、ヒロシ、内田、ゴートクの3人に。
 
その構成を見てか、右サイドバックにフミヤがテストされたり、左サイドバックに加藤大がテストされているようです。これを見てもよく分かるのは、やはりクロさんのチームも淳さん同様、サイドバックの部分でのビルドアップに大きなポイントを置いているということでしょう。
現時点では左にヒロシ、右にうっちーという起用が最有力のようですが、シーズンが進んでこのメンバーがどうなっていくか、今年の新しい試みがどう出るか、は非常に注目だと思います。
 
 
 
そしてセンターバック。ここが今年の浮沈の大きなポイントを握っているのは間違いないでしょう。これまでは永田充と千代反田充という絶対的なコンビが君臨し、この二人のコンビネーションで多少アバウトな部分もカバーしていたのは間違いないと思います。
 
とは言え、今年は千代の代わりに千葉が入るわけですが、これまでセンターバックで彼が出場した試合のクオリティを考えれば、千代との差は気にするほどのものではないと思います。むしろ、100試合近くの試合の中で得点に直結する縦パスが数回しか見られなかった千代と、去年センターバックとしてプレーした試合が2試合しかなかったのにマリノス戦で完璧なフィードを貴章に通した千葉、という比較をすれば、攻撃・ビルドアップではむしろ上だとも言えるかもしれません。
しばらくは永田と千葉のコンビを熟成を待つ試合が続くかもしれませんが、その完成はさほど遠くないのではないでしょうか。
 
ただ、問題はその二人が使えない時にどうするか。控えは共にリーグ戦出場数ゼロの大輔と大野。今年は永田と千葉のどちらかが使えない試合で、この二人がどんなパフォーマンスを見せるか、に順位は大きく左右されると考えていいと思います。
 
新潟の守備は「全体としてのプレス」って所に目が行きますが、結局のところ「センターバックがどの位置で、どういうタイミングで相手にアタックをかけるか」によって大半は決まってしまいます。その重責を負った時、この二人がどういうプレーを見せるか。二人にとっては大チャンスであると同時に、瀬戸際でもあるシーズンでしょう。本当に本当に、本当に頑張って欲しい所ですし、私たちサポーターも彼らに温かい目と、そして厳しい要求をしていく必要があると思います。彼らがいいプレーをした時はしつこいくらいの拍手と声援を。「選手を育てる」という課題は私たちにもその責任の一端があるはずです。
 
 
 
ボランチはマーカスが抜けた一方、小林慶行が加入し、更に加藤大がいきなりスタメン争いに名乗りを上げたことで、千葉がセンターバックに集中してこのポジションの頭数から抜けたのを差し引いても層は厚くなった言えるでしょう。
それにこの二人はこれまでの新潟のボランチでは、シルビーニョ以来の「パスをベースにゲームを作れる」ボランチ。このオプションが増えたのはとても大きいでしょう。去年はその選手の不在を4-3-3システムの変更、つまりマルシオのセンター起用で発展的に「ごまかした」訳ですが、今年はそんなごまかしも必要ないと思います。
 
ただ、これは全て本間勲と言う絶対的中心が34試合フルに近い形で出場してこその話です。今年も期待してます。頼むぜキャプテン!
 
 
松下が抜けたサイドハーフですが、その位置にはミシェウと西、そして戻ってきた河原。・・・なんですが、今年はそもそもその「サイドハーフ」というポジション自体の扱いが、これまでとは色が違う感じになっていますので、あんまり去年との比較は意味がないのではないか、って気もします。
練習試合やPSMを見ると、その位置には4-2-3-1システムを導入したこともあってか、よりアタッカー的な動きを期待された選手(河原、ヨンチョルなど)が起用されているようですし、これは間違いなくクロさんの色なんでしょう。PSMでマルシオが下がった後、オオシがトップで貴章が左サイドに回ったのもその一環だと思います。
 
ですので、そのサイドハーフがそのクロさんが期待するタスクをしっかり遂行して、攻撃面での特徴を押し出す事がまず何より重要だし、それが今年のチームの攻撃の原動力なのは間違いないでしょう。
ただし、忘れてはならないのは、サイドバックの前でフィルターを掛ける、スペースを埋める、といった守備での貢献の部分。これは松下が天才的に上手かった所でもあります。さっきの千代と永田のコンビについて「アバウトな所もカバーしてくれた」と書きましたが、松下の貢献もまさにそれ。彼のように常に自チームのスペースの認識と、相手の攻撃の予測を90分怠らない姿勢は不可欠だと思います。
 
つまり、今年おそらく最もハードワークを強いられるポジションはサイドハーフでしょう。言い換えれば、彼らの運動量こそが今年のチームの原動力、バロメーターだと思います。今年はこのポジションに特に注目すべきじゃないでしょうか。
 
 
 
FWはファグネルの補強以外は大きな動きなし。ペドロが抜けた後、攻撃力が落ちた部分をどうするかって所で、一枚余った外国人枠をここで使うのではないか、という憶測もありましたが、現時点では補強はありません。
個人的な見解ですが、今年の4-2-3-1システムの導入はこのFWの選手構成と言うのもあったのではないでしょうか。シルビーニョがいないなら発展的に解消して4-3-3。ペドロがいないなら発展的に解消して4-2-3-1。その挑戦の途中って見方もできると思います。
 
今年も貴章とオオシの二人が軸になるのは間違いないでしょう。去年のオオシは、前半はペドロという特異な存在を活かすためのスペースメイクと起点作りに奔走し、後半はソリッドな中盤から飛び出してくる選手を活かすためのスペースメイクと起点作りに奔走するという、言うなれば自己犠牲のシーズンだったと思います。
恐らく今年もその役割は大きいとは思いますが、今年の彼は、ひたすら走ることでリズムを作っていくという前線(特にサイド)の中にあって、一つ固定的な起点を作るという大きな役割を負うことになるのではないでしょうか。今年のチームが目指すサッカーは、例年以上に走る事をベースとするもの。その中で、前線で起点を作ってチームに息を落ち着かせる時間を作る役割は、オオシ以外にはできないでしょう。今年も極めて重要なピースです。ガンバレオオシ。
 
そして貴章。今年はワールドカップイヤー。岡田監督のサッカーにおいて、「サイドでアタッカー的な役割が出来て運動量のある選手」は、確実に求められる要素です。既に当確印が点いてる選手の数を考えた時、確実にあと1~2枠余りがあると思います。そこに飛び込む挑戦の始まりです。ガンバレ貴章。
 
 
 
今年は「新移籍制度の最大の犠牲者」だとかネガティヴな論調がメディアに目立った気がします。なんでも、今年はやばいんだそうです。え、そうなの?www
ま、去年の補強とチーム構成を見ても下位予想をしていた程度の人たちの話は話半分に聴いておくのが吉でしょう。やるのは私たちのチームであり、そして私たち自身です。
 
さっきもちょっと書きましたが、サポーターは「選手を育てる」ということに関して、少なからず責任を負っているものだと思います。試合に出続けることで選手は成長しますが、それは試合に出ることで観客の目に晒される、論評の対象になる、って事を肌で感じるからです。
今年は若い選手も多いし、チームとしても色んな部分で新たな成長を遂げていく事でしょう。だからこそ、私たちはそのチーム・選手をこれまで以上に理解し、サポートしていく必要があるでしょう。
 
勇気ある挑戦をした選手には声援を。良いプレーにはしつこいくらいの惜しみない拍手を。無関心と無理解は、選手を殺します。間違いありません。その一方で、選手への理解と愛情は、確実に選手を伸ばします。大げさな事だと思われるかもしれませんが、これは純然たる事実です。
 
 
 
という訳で明日、新たなスタートです。優勝しましょう。タイトル獲りましょう。去年まで残留争いしかしてなかったチームが、最終節のロスタイムまで首位にいる事があるリーグなんです、Jリーグってのは。不可能なんて何もありません。
だって去年見たじゃないですか。専門誌の専門家たちが降格チームに上げていたチームが、ずっと上位争いを演じ、3連覇を達成した鹿島相手に2勝を奪った姿を。内弁慶と揶揄されたチームが、アウェイでリーグ最多の勝ち点を上げた姿を。
 
優勝しましょう。タイトル獲りましょう。